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東日本フィギュアスケート特別講座2024

【最終講】東日本フィギュアスケート特別講座 長谷川一輝 後編

こんにちは!大学院修了フィギュアスケートファンのLenaです!

3月20日に明治神宮外苑スケート場で行われたエキシビジョンで、一人の選手が現役として最後の演技を披露しました。名は、長谷川一輝。神奈川県生まれ北海道育ち、高校生時代は国際大会に出場した経歴があります。東京理科大学に進学後は全日本フィギュアスケート選手権大会に4度出場、バンクーバー五輪男子シングル銅メダル高橋大輔氏プロデュースのアイスショー『滑走屋』のアンサンブルスケーターに選ばれた選手でした。
2019年から毎年、長谷川選手の誕生日(5/13)に特別講座を組んで書くほど、魅力的な演技を披露してきました。『毎回概論シリーズで紹介しきれない!!』と筆者は心底から、長谷川選手のスケートに虜になっていました。
2024年3月、競技引退を受け、最後に長谷川選手の軌跡を残したいという思いから、『東日本フィギュアスケート特別講座2024』の枠で、3回にわたって講義していきます。

前編では、今季2023-24シーズンのプログラムについて、中編では5歳から現役引退までの道のりを、今回後編では選手としての魅力について講義していきます!

毎年書いている忠告です。有り余るエネルギーの結果、情報量が多くなりました。決して引かないでください。…最後の忠告です。本当にご興味ある方のみ、この先読み進めてください。

※過去作
2019年2020年2021年2022年2023年

※URLの紹介のみ可、本講義のスクリーンショットの公開を禁じます

筆者はよく、長谷川選手の良い所として、

表現面では
・曲の捉え方
・ノーブルな雰囲気
・スケール感の大きさ
技術面でいえば
・スピードと姿勢の美しさを兼ね備えたスケーティング
・高く飛び上がり、柔らかに着氷するジャンプ
・バリエーション豊富で軸のぶれないスピン
・時々ファンを驚かせる技の実施

『書ききれないほど沢山魅力がある』
と毎年書き続けていました。

また、同じクラブに在籍していたことがある鈴木潤氏は解説で以下のように言及したこともあります。

全ての要素を、そつなく高いクオリティでこなすというところが、彼の強みかなと思っています。

2022年東日本選手権 選手権男子SP FOD解説

あらゆるエレメンツも、表現も、高い質を持っていて、惹かれるポイントが沢山あったのです。

まずは表現面について述べましょう。

雑誌『ワールド・フィギュアスケート No.91』2020年全日本選手権レビューにて、國學院大学准教授、町田樹先生は『デニス・テン・メモリアル賞』として取り上げ、表現に関して以下のように評価していました。

決してオーバーアクションではないし、感情をあからさまに表に出しているわけでもない。しかし、彼の一挙手一投足には明確な意志が感じられる。

[1] ワールド・フィギュアスケートフィギュアスケートNo.91

確かに、芸人のように大げさに表情を作って滑るようなタイプではなかったです。ただ、一歩一歩のスケーティングから、自分の感情が滲み出るような、演技を披露していました。曲調に合わせて、強さ、柔らかさ、切なさ、スケール感、様々な情景が目に見えたのです。ジュニア時代から、滑りそのものでテーマを提示する、ある意味大人びて見える、上品な演技でした。

本人は、

『流れるような綺麗な曲』を得意とする

[2] 【全日本選手権への道 東京選手権2021】選手インタビュー動画〈フジテレビ公式〉

とインタビューで答えていました。

映画『海の上のピアニスト』、『Anthem(from “Chess”)』、『The Beatles Concert』に代表されるような綺麗な曲は然り、映画『カサブランカ』のように、渋い男優像を求められようとも、アルバム『KOJIKI』やアルバム『ニュー・インポッシビリティーズ』みたいなオリエンタルな曲も、アップテンポの曲も、更に『マラゲーニャ(演奏:ブライアン・セッツァー)』、『Blues for Klook』といった一風変わった曲も、全て自分のモノにし、ファンを魅了していました。

表現を一つ大きな課題として、コーチで振付の横谷花絵先生とも相談して積み重ねていました。2023年7月に行われた大会ではPCSで7点台が並び、長谷川選手本人は成長を感じたというのです。

[3]、[4]

大学進学後は、よりスケール感が大きくなったと感じるようになったのも、日頃の賜物でしょう。

続いて、技術的な部分に言及しましょう!

・スピードと姿勢の美しさを兼ね備えたスケーティング

演技が始まってから、最後までスピードを保っているように見えるようなスケーティングでした。更に、滑っている時の姿勢が綺麗なのも大きな特徴でした。

膝関節を上手く活かし、効率よくスケーティングの伸びを出していたように見えました!

端正なスケーティングから、ノーブルな雰囲気を醸し出していたところもありました。

・高く飛び上がり、柔らかに着氷するジャンプ

長谷川選手のジャンプは、非常に高く飛び上がって回り、膝、足首をしっかり曲げて、柔らかく着氷するジャンプでした!アクセルを含めた全てのトリプルジャンプを成功させるほどの、ジャンプの力を持っていました。また練習では4回転にも挑戦していました。

2019年全日本Jr.選手権の生中継で、3Lz+3Tのアイスコープ(フジテレビ独自のエレメンツ測定システム)を用いた測定結果が放送されました。3Lzは52cm、3Tは46cmと表示されていました。
この結果に、解説を務めていたソチ五輪女子シングル出場村上佳菜子氏は
『セカンドジャンプのほうが高い』
と述べていました。

2019年全日本ジュニア選手権 ジュニア男子FS BSフジ解説

・バリエーション豊富で軸のぶれないスピン

スピンを回る時の軸が真っ直ぐで、回ってもぶれないのも大きな特徴でした!とりわけ、アップライトストレートの難しいバリエーションである『トンプソン』において、その綺麗さを発揮していたように見えました。2017-18シーズン以降、SPでは最後にCCoSpを配置し、レベル取りの最後に持ってきて、『トンプソンで締める』というイメージが付いていきました!

スピン中のジャンプ、ジャンプでの足替えの1つのプログラムの中で両方実施できるのも、意外と珍しいように思えます。スピンのポジションがバラエティーに富み、レイバック系以外のほぼ全ての技が出来たと考えてます。スピン中の手の振りも豊富に取り入れられたのも、安定しているからこそ出来る技です。

ポジションそのものも姿勢が綺麗で、見栄え良く見えました。

本人もインタビューで

『スピンが結構得意な部類に入る』

[5] Sapporoジモスポ★ はばたけ!未来アスリート フィギュアスケート男子 長谷川一輝

とも答えていました。

・時々観客を驚かせる技の実施

観客が予想もしなかったタイミングで、複雑で、難しそうに見え、今まで見たことがないような小技を披露してたのも大きな特徴でした。

ジュニア時代に取り入れていたのは、シットのポジションでウィンドミルをしてから、一度ウィンドミルを挟んで、足替えシットスピンを実施するという技、これが長谷川選手がテクニシャンとしてのイメージが出来たきっかけでした。

スプレッドイーグルを得意とし、ジャンプやスピンへの入り、StSq、ChSqで大きな見せ場として取り入れていました!更に、イーグルの最中にも手の振りを入れたり、解く時も工夫を取り入れたりすることが出来ました。

シニアに上がってからは、ChSqが加わわったこともあり、プログラムの中でより多くの技を披露できるようになりました。2021-22シーズンSPではStSqの中でニースライドしながら片足を蹴り上げる動き、2021-23シーズンFSのStSqでは左足でツイズル回った直後に、右足を軸に左足を上げたり、ChSqでは、スピードたっぷりに、アウトサイドイーグルで一周回ったあとに、180度開脚するバレエジャンプを披露しました!

このバレエジャンプについて、世界選手権に出場経験がある無良崇人氏が全日本での解説で、2年連続で同じ事を述べていました!!

これ意外と難しいんですよ、1回足開いて、もう1回閉じなきゃいけないので

2022年、2023年 全日本選手権大会 FS BSフジテレビ解説

見た目以上に難しいことを、しかもリンクの壁よりも高く飛んでいると思わせるようなものを披露していたのです。

2022-24シーズンSPのStSqで、無音になる瞬間を狙って、前後180度に開脚した状態でスライドし、そして素早く起き上がって滑るという技を披露していました。多くのファンにとって、見たことも聞いたこともない、今までの発想にはない技に驚き、拍手を送っていました。

なぜ、このようなことができたのか、次のページで解説します。

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東日本フィギュアスケート特別講座2024

【最終講】東日本フィギュアスケート特別講座 長谷川一輝 中編

こんにちは!大学院修了フィギュアスケートファンのLenaです!

3月20日に明治神宮外苑スケート場で行われたエキシビジョンで、一人の選手が現役として最後の演技を披露しました。名は、長谷川一輝。神奈川県生まれ北海道育ち、高校生時代は国際大会に出場した経歴があります。東京理科大学に進学後は全日本フィギュアスケート選手権大会に4度出場、バンクーバー五輪男子シングル銅メダル高橋大輔氏プロデュースのアイスショー『滑走屋』のアンサンブルスケーターに選ばれた選手でした。
2019年から毎年、長谷川選手の誕生日(5/13)に特別講座を組んで書くほど、魅力的な演技を披露してきました。『毎回概論シリーズで紹介しきれない!!』と筆者は心底から、長谷川選手のスケートに虜になっていました。
2024年3月、競技引退を受け、最後に長谷川選手の軌跡を残したいという思いから、『東日本フィギュアスケート特別講座2024』の枠で、3回にわたって講義していきます。

前編では、今季2023-24シーズンのプログラムについて、今回、中編では5歳から現役引退までの道のりを、大きく4つの時期に分け、マスメディアによるインタビュー、筆者が実際に見てきた風景を基に講義していきます!

毎年書いている忠告です。有り余るエネルギーの結果、情報量が多くなりました。決して引かないでください。…最後の忠告です。本当にご興味ある方のみ、この先読み進めてください。

※過去作
2019年2020年2021年2022年2023年

※URLの紹介のみ可、本講義のスクリーンショットの公開を禁じます

遍歴(※敬称略)
出生地:神奈川県
国スポ代表:北海道
生年月日:2001年5月13日
学校:札幌市立真駒内中学校→札幌市立札幌藻岩高校→東京理科大学
所属クラブ:月寒FSC→ROYCE’F・S・C→明治神宮外苑FSC・東京理科大学
コーチ:山田真実→横谷花絵
拠点:札幌市周辺→明治神宮外苑アイススケート場
パーソナルベスト(※公開のみ)
SP 69.59 FS 133.74 総合 193.10(第67回全国高等学校スケート競技選手権大会 フィギュア競技)
プログラム
2015-16 SP:交響曲第9番ホ短調『新世界より』→ミュージカル『トップ・ハット』より『踊るリッツの夜』
振付:鈴木潤,山田真実→川越正大
FS:映画『海の上のピアニスト』より
振付:川越正大
2016-17 SP:ミュージカル『トップ・ハット』より『踊るリッツの夜』
振付:川越正大
FS:映画『海の上のピアニスト』より
振付:川越正大
2017-18 SP:アランフェス協奏曲(演奏:ジークフリート・ベーレント,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)
振付:川越正大
FS:アルバム『KOJIKI』より
振付:佐藤操
2018-19 SP:アランフェス協奏曲(演奏:ジークフリート・ベーレント,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)
振付:川越正大
FS:映画『カサブランカ』より
振付:佐藤操
2019-20 SP:マラゲーニャ(演奏:ブライアン・セッツアー)
振付:川越正大
FS:映画『カサブランカ』より
振付:佐藤操
2020-21 SP:Anthem(from “Chess”)(歌:ジョシュ・グローバン)
振付:横谷花絵
FS:映画『カサブランカ』より
振付:佐藤操
2021-22 SP:Blues For Klook(演奏:エディ・ルイス)
振付:横谷花絵
FS:The Beatles Concerto(作曲:ジョン・ラター)
振付:横谷花絵
2022-23 SP:Happy(Chartbeat-Version)(歌:サイモン・マーロウ)
振付:横谷花絵
FS:The Beatles Concerto(作曲:ジョン・ラター)
振付:横谷花絵
2022-23 SP:Happy(Chartbeat-Version)(歌:サイモン・マーロウ)
振付:横谷花絵
FS:アルバム『ニュー・インポッシビリティーズ』より(演奏:ヨーヨー・マ,シルクロード・アンサンブル,シカゴ交響楽団)
振付:横谷花絵
主成績
JOCジュニアオリンピックカップ大会 第84回全日本ジュニア選手権大会 ジュニア男子 26位
第36回全国中学校スケート大会 男子 7位
JOCジュニアオリンピックカップ大会 第85回全日本ジュニア選手権大会 ジュニア男子 7位
JOCジュニアオリンピックカップ大会 第86回全日本ジュニア選手権大会 ジュニア男子 7位
第67回全国高等学校スケート競技選手権大会 フィギュア競技 個人2位
Coupe du Printemps 2018 Jr.Men 2位
第68回全国高等学校スケート競技選手権大会 フィギュア競技 個人6位
JOCジュニアオリンピックカップ大会 第88回全日本ジュニア選手権大会 ジュニア男子 13位
第69回全国高等学校スケート競技選手権大会 フィギュア競技 個人3位
第46回東日本選手権大会 6位
第89回全日本選手権大会 20位
2021 東京選手権 男子 1位
第47回東日本選手権大会 3位
第90回全日本選手権大会 22位
第16回東日本学生フィギュアスケート選手権大会 7,8級男子 2位
第48回東日本選手権大会 2位
第91回全日本選手権大会 22位
第95回日本学生氷上選手権大会 フィギュア競技 7,8級男子 8位
第17回東日本学生フィギュアスケート選手権大会 7,8級男子 2位
第49回東日本選手権大会 5位
第92回全日本選手権大会 25位
第96回日本学生氷上選手権大会 フィギュア競技 7,8級男子 10位
第78回国民スポーツ大会冬季大会 スケート競技会 フィギュア競技 成年男子 10位

スケート始めてからノービス時代まで

神奈川県生まれ、札幌市に住んでいた5歳から始めました。先に習っていた3歳上の姉の影響でした。

2024年4月現在、確認出来る範囲で1番古いのは、小学1年生に遡ります。2009年2月に行われた『2009フリースケーティング大会』に月寒FSC所属でエントリーしています。小学5年生までは、年に2回ほど大会に出るという状態が続いていました。当時は野球を並行してやっていました。

野球少年の運命を変えたのは、小学3年生の頃から高校卒業まで指導した山田真実先生でした。

[1]

ソチ・平昌五輪男子シングル金メダリストの羽生結弦氏を、スケートを始めた時から8歳まで指導していた事で名の知られたコーチです。一番最初に、素質を見抜いたエピソードで知られています。

そんな山田先生に、長谷川選手の身体能力の高さを見出され、フィギュアスケートに懸けた方が良いと見たのです!
野球からフィギュア一本へと導き、才能が開花したのです。

[1]

同門に、のちに北海道大学大学院修了、文武両道理系スケーターとして名を馳せた鈴木潤氏、現在はペアで活躍する長岡柚奈選手(木下アカデミー)がいました。札幌市内には2つの通年リンクがあるものの、スピードスケート、ホッケーも盛んで、貸し切り枠が限られてしまう状況でした。ホームリンクと呼べる場所が無い、更に札幌市だけでなく、近隣の苫小牧市、泊村、早来町等にも出向いて、練習をするという環境でした。

小学6年生だった2013年、初めて東北・北海道ブロックに、最初で最後の全日本ノービス選手権に出場を果たしました。2013-14シーズン中には、アクセルを含めた全ての種類のダブルジャンプを、構成に組み込んでいました。

スケート年齢早生まれ(5月生まれ)のため、中学1年生でジュニア年齢に到達、しかし6級を持っていなかったため、2014-15シーズンは全国規模大会に出場出来ませんでした。3S、3Tを構成に組み込んでいました。道内の大会に出場して結果を残し、中学2年生の夏までに6級を取得しました!

(次のページでは、ジュニアカテゴリーに本格参戦した2015-16シーズンの話をします↓)

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【最終講】東日本フィギュアスケート特別講座 長谷川一輝 前編

こんにちは!大学院修了フィギュアスケートファンのLenaです!

3月20日に明治神宮外苑スケート場で行われたエキシビジョンで、一人の選手が現役として最後の演技を披露しました。その選手の名は、長谷川一輝。神奈川県生まれ北海道育ち、高校生時代は国際大会に出場した経歴があります。東京理科大学に進学後は全日本フィギュアスケート選手権大会に4度出場、バンクーバー五輪男子シングル銅メダル高橋大輔氏プロデュースのアイスショー『滑走屋』のアンサンブルスケーターに選ばれた選手でした。
2019年から毎年、長谷川選手の誕生日(5/13)に特別講座を組んで書くほど、魅力的な演技を披露してきました。『毎回概論シリーズで紹介しきれない!!』と筆者は心底から、長谷川選手のスケートに虜になっていました。
2024年3月、競技引退を受け、最後に長谷川選手の軌跡を残したいという思いから、『東日本フィギュアスケート特別講座2024』シリーズを立ち上げて取り上げ、更に前編、中編、後編に分けて講義することにしました。

前編では、今季2023-24シーズンのプログラムを主に講義していきます!

※参照
過去作
2019年2020年2021年2022年2023年

毎年書いている忠告です。有り余るエネルギーの結果、情報量が多くなりました。決して引かないでください。…最後の忠告です。本当にご興味ある方のみ、この先読み進めてください。

※URLの紹介のみ可、本講義のスクリーンショットの公開を禁じます

2023-24シーズンデータ(※敬称略)
生年月日:2001年5月13日
学校:東京理科大学
所属クラブ:明治神宮外苑FSC・東京理科大学
コーチ:横谷花絵
国スポ代表:北海道
プログラム
SP Happy(Chartbeat-Version)
FS アルバム『ニュー・インポッシビリティーズ』より
プログラム振付
SP 横谷花絵
FS 横谷花絵
成績
げんさんサマーカップ2023フィギュアスケート競技会 選手権男子 8位
2023年 東京夏季フィギュアスケート競技大会 シニア男子 1位
2023 東京選手権 男子 5位
第17回東日本学生フィギュアスケート選手権大会 7,8級男子 2位
第49回東日本選手権大会 5位
第92回全日本選手権大会 25位
第96回日本学生氷上選手権大会 フィギュア競技 7,8級男子 10位
第78回国民スポーツ大会冬季大会 スケート競技会 フィギュア競技 成年男子 10位

今季プログラム

SPHappy(Chartbeat-Version)
歌:サイモン・マーロウ
振付:横谷花絵

映画『怪盗グルーのミニオン危機一発』のテーマ曲で、ファレル・ウィリアムスが歌った曲を、ベルギーを拠点に活動する『キャピタル・ダンス・オーケストラ』が演奏、サイモン・マーロウが歌ってカバーした音源を使用しています。

ミニオンシリーズに使用するため、幼児向けに作られたことが伺える曲です。『Love』等、大人なイメージさせるような言葉が無く、平易な言葉を使用していること、キーが高い男声歌手を起用していることが要因です。
ただ、このままではシニア男子選手が滑るとなると、幼稚な印象を与えるリスクもあります。そこで、原曲ではなくカバー曲を使用することで、シニア男子選手のイメージにフィットさせる効果があったと見ています。
原曲は、細く、高い声の男性ボーカルでポップな演奏でした。カバー版は、太く、低い男性のボーカルで、それに合わせてキーを下げ、ジャズオーケストラによる演奏による曲であります。子ども向けの曲に、大人の要素で中和した曲に仕上がっています!
原曲と、今回使用している音源と、両方YouTubeで、アーティストの公式チャンネルからMVが公開されているので、外部参照のコーナーからご視聴ください!

振付であり、コーチの横谷先生は、もしかしたらご子息をきっかけに知った曲なのかもしれません。

何が起きたって平気さ、だって自分は幸せだからさ
自信に満ち溢れた内容の曲であります!コーチからのエールも込められているのかもしれないです。

ここまでは大方、昨年も書いた内容となります。

このプログラムは昨季からの継続プログラムです。SPを持ち越したのは2017-19シーズンに披露した『アランフェス協奏曲』以来、大学生になってからは初めてとなりました。

昨季とは大きく違うのは、『シーズンを通じてトリプルアクセルに挑み続けた』ということです。

2023年1月に行われた国民体育大会からずっと、冒頭のジャンプを3Aに変えて、挑み続けていました。これまでは調子によって、3Aに挑んだり、回避したりの繰り返しでした。シーズンを通じて3Aに挑み続けたのは、今季が初めてでした。

スピンのレベル構成は(※〇→レベル要件、◎→レベル4必須要件、以後同じ)
FCSp バタフライ◎→CF○→CU○→CS○
CSSp 難しい入り○→シット基本姿勢→スピン中のジャンプ○→SB○→足替え→SS○→難しい出◎
CCoSp キャメル基本姿勢→SF○→CE◎→ジャンプして足替え○→シット基本姿勢→US○
と大きな変更点はありません。

振付が続々と繰り出され、次に何が出るのか楽しみになる振付が大きな魅力です!品の良さ、柔らかな所作で、クールにかつ小粋に滑る姿がたまりません!そして、このプログラムの象徴と言えば、StSqで無音になる瞬間に決める、前後開脚でのニースライド!かつて長谷川選手と共に練習し、北海道大学大学院に通いながら競技を続けた鈴木潤氏が、2022年東日本の解説で、『途中の手をついて滑るシーン、あれ個人的にちょっと手痛くないのかなと思うところもあるんですけど、ま練習の賜物ですかね、僕にはできないです。』とコメントするほどです。

アップテンポの中を、細かな振付の積み重ねて滑っていく故の難しさもありました。更に今季は冒頭のジャンプの難易度が一気に上がるという状況でした。それが全て決まった時の凄さは、想像を超えるものでした。2023年7月29日~30日に行われた『第2回関東学生有志大会』で、80点代をマークしたことに表れました(この大会は一般は事前の申し込みで観覧可能、エントリー・点数・ジャッジスコアは個人情報保護のため、一般非公開)。

もう、この時は凄かった…
曲が子どもと大人の要素を掛け合わせたものとあり、シニア4年目、20代前半の爽やかさ、弾ける勢いを上手く活用し、お洒落に滑っていく姿に、ただ、魅入りました!2季目となり、振りに余裕が見える状態で、3Aに果敢に挑戦してきた、その心意気が記憶に残っていくプログラムでした!

次のページではFSについて語ります!

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全日本選手権

【レビュー】全日本フィギュアスケート選手権大会 2023年 競技3日目 ペアFS,男子FS編

第92回全日本フィギュアスケート選手権競技3日目、ペアFSと男子FSの全選手・組の感想をまとめます

第92回全日本フィギュアスケート選手権大会
日程:2023年12月20日(水)~12月24日(日)
会場:ビッグハット(長野市若里多目的アリーナ)(長野県長野市)

まず、ペアFSからご覧ください↓

ペア

1.長岡柚奈/森口澄士選手組(ナガオカユナ/モリグチスミタダ) 木下アカデミー

FS:Space Table Symphony(演奏:Bernd Breiter&デイヴィッド・ギャレット&Le Shuuk)
FS振付:キャシー・リード

SPの明るくポップな演技とは、打って変わってスケール感のある曲を選びました!四季をテクノ風にアレンジした曲です。

冒頭の2Twを綺麗に決まり、SBSの3Lo+2A+2A+SEQを鮮やかに決め、もうそこからはミスする気配を全く感じさせない雰囲気になりました。その後は目に分かるミス無く、二人に魔法がかかった素晴らしい演技でした!!アイスダンスのような緻密さと、ペアのダイナミックさ、スピード感を融合させたプログラムに魅せられました!会場総スタオベ!

長岡選手は北海道時代、シャープなスケーティング、動きの引き出しの多さが印象的に残っていた選手でした。たった7・8ヶ月前の決断から、競技生活が大きく変わりました。ペア経験のある森口選手の導きもあり、試練を乗り越えてきた姿が目に浮かびました。

二人の化学反応から生み出される演技に、感銘を受けました!

117.57 173.64 SB


引き続き男子FS第1グループ1~6番の選手の感想をどうぞ!

男子FS 第1グループ

1.蛯原大弥(エビハラダイヤ)選手 明治神宮外苑FSC

FS:映画『ミッション:インポッシブル』より
FS振付:岩本英嗣

ジュニアから推薦で出場し、FSに進出しました!

ジュニアのFSとの大きな違いは、StSqがあるかどうか、演技時間も長くなります。どこにStSqが入るのか、それに伴ってどう曲を足していくのか、1つの注目ポイントにもなります。

昨季から継続のプログラム、StSqが入ることもあり、いつもとは違うプログラムになるので楽しみにしてました!

6分間練習の最後に3Aを決めました!6分間練習が終わった直後に滑走となります!冒頭、SPでは転倒した3A、見事に決めました!6練の良いイメージがあってなのか、これで流れに乗りました!

その後は盤石な体制、次々とジャンプを決めていきました!

2A+3Tのあとから、ジュニアとは違う曲が入っているように聴こえました。それから、1番最後のジャンプである3Sを降りて、FSSp、ChSqをして、お馴染みのテーマ曲の部分でStSqに突入しました!ChSqのところをシニア尺ではStSqに変えるのも、1つの策略です。蛯原選手のこのプログラムの場合、最後をStSqに変えて、ターンを切るさいに激しさを表して印象づけようという狙いがあると考えてます。

パワーとキレがあって、気迫を感じる延喜でした。チャンスをモノにしていこうという、意志の強さも伝わりました!

ガッツポーズ飛び出た!スタオベもありました!

131.11 192.86 SB

2.田内誠悟(タウチセイゴ)選手 富士FC

FS:映画『ムーラン・ルージュ』より
FS振付:安藤美姫

前に滑った蛯原選手に引き続き、ジュニアから推薦で出場した選手です!2年連続で出場となります。

昨季のFSでムーラン・ルージュを使用し、今季も継続していました。しかし、10月に安藤美姫先生のもとに移ることになった際にSP・FS共にプログラムを作り変えることになったのです。FSは元々の配置をほとんど変えずに、曲を一部差し変え、振りも変えるという措置が取られました。

中盤に、物語の中で1番盛り上がる曲『Come What May』を入れました。そこにChSqを配置し、直後にStSqを付ける選択を取りました。StSqのエンドに、ジュニア尺のChSqの最後の見せ場、レイバックニーズライドを入れて、観客にインパクトを残しました。

最後までしっかり集中して、挑んでいこうという思いが見えました。

しなやかで繊細な所作に、どんどん力強さが加わっていく。その過程を見ていくのがとても楽しみな選手だと、改めて感じました!

126.12 190.01

3.木科雄登(キシナユウト)選手 関西大学

FS:Primavera/In Un’Altra Vita(演奏:ルドヴィコ・エイナウディ)
FS振付:樋口美穂子

1日目でも言及した通り、高橋大輔さんがプロヂュースするアイスショー滑走屋にてアンサンブルスケーターとして出演予定の選手です。

シニアに上がってから、初めて全日本のFSに進出しました。3年ぶりの全日本FSに対し、これまでの悔しさを晴らし、この演技に懸けるという強い思いが伝わってきました!

静かに、冷たさを感じる音楽、冬の嵐でも表すようなメロディーが流れる中、最初の3Aは転倒してもすぐに立ち上がり、その他のジャンプは全て降り立ちました。

後半1番最初のジャンプである、3Fからパンフレットに記載の無い曲が挿入されています。前半と同じアーティストによる曲です。

全てのジャンプを終えた後に配置されたChSqにて、リンク中央でホップ、大きな軌道を描くイナバウワー等が印象に残りました!

123.60 188.12

4.垣内珀琉(カキウチハル)選手 ひょうご西宮FSC

FS:Wake Me Up(歌:アヴィーチー)
FS振付:佐藤操

ジュニアから推薦出場し、既に2024年ユース五輪日本代表として内定しています。世界ジュニア選手権代表を懸け、このFSを滑ります。

昨季から継続のプログラム、SPとは打って変わって明るいプログラムです!

3本目の3連続ジャンプの前に手拍子が鳴ってしまうほどノリの良い曲です!2023年国体では、リンクサイドの仲間がライブ会場かとつっこみたくなるほど、曲に合わせて体を揺らして盛り上げてたのを思い出しました(笑)

2Aのあとジュニア尺ではChSqだったところをStSqに充てて、3Lz+2TそのあとにChSqを新たに配置しました。

SPでは転倒した4Tをなんとか堪えて降りつつも、最後まで軽快に、颯爽と踊っていく姿が光ってました!

131.72 196.30 SB

5.大島光翔(オオシマコウショウ)選手 明治大学

FS:映画『ムーラン・ルージュ』より
FS振付:シェイ=リーン・ボーン

アイスショー滑走屋にてアンサンブルスケーターとして出演予定の選手です。

SPではマリオになりきり、話題をさらった大島選手!FSは、自身初の海外の振付師によるプログラムで挑みます!

リンクサイドに中野園子先生もいました!大島選手の父でもありコーチが、かつて中野先生のアシスタントコーチを勤めていたことがきっかけです。

冒頭は、昨季後半から挑戦していなかった4Lzを、今季初挑戦しました!

『ネイチャー・ボーイ』から始まり、FCCoSpのあとに『Because We Can』という流れはいつも驚いてしまうのです。初戦で観客から笑いが起きました。退廃的な雰囲気から一転、突然、はいどうもーって漫才の曲が流れてくるからです。歌詞の内容も、愛とは何かから一転、ただ出来る、出来ると叫んでいるものなので、ギャップを感じました。Because We Canはムーラン・ルージュの中で流れた曲でもあります。

ユア・ソングでStSqとChSqの連続は、大切な人へ思いを伝えているように感じました!最後は、リンク中央のカメラに向かって薔薇を差し出す動きをしました!

ムーラン・ルージュのメドレーで入れるのは珍しい曲を使ってて、新鮮さを感じました。挑戦しつつ、華やかで情感こもった演技が印象的でした!

122.47 189.36

6.高橋星名(タカハシセナ)選手 木下アカデミー

FS:ミュージカル・映画『レ・ミゼラブル』より
FS振付:キャシー・リード

ジュニアから推薦で出場を果たした選手です。今季がジュニアデビューです。

SPではコミカルな曲調、FSではドラマチックな演技へと変えていこうとしてる風に思えます。

3S3Tのあとオン・マイ・オウンに合わせてChSqを配置しました!そこではしっとりとした滑りを魅せていました!ラストジャンプのあと群衆の歌に合わせてStSqを配置しました!そこでは、革命軍を率いる、勇ましい姿を表していました!

曲によって、滑りのタッチ、伝えたい思いを変えていくのが印象的でした!

体を大きく使って、世界観を伝えていこうとする姿が素敵でした!

本人も、終わったあとにっこり笑顔、お辞儀のあと手を振りました!

123.49 191.77

次は第2グループ7~12番の感想です。

カテゴリー
全日本選手権

【レビュー】全日本フィギュアスケート選手権大会2023 競技2日目 アイスダンスRD,女子SP編

第92回全日本フィギュアスケート選手権競技2日目、アイスダンスRDと女子SPの全選手・組の感想をまとめます

第92回全日本フィギュアスケート選手権大会
日程:2023年12月20日(水)~12月24日(日)
会場:ビッグハット(長野市若里多目的アリーナ)(長野県長野市)

まず、アイスダンスRDからご覧ください↓

アイスダンスRD 第1グループ

1.国村柚里/坂部魁士選手組(クニムラユリ/サカベカイジ) 臨海フィギュアSC/大阪経済大学

RD:She Drives Me Crazy/Jessie’s Girl(歌:ファイン・ヤング・カニバルズ/リック・スプリングフィールド)
SP振付:有川梨絵

今年競技会デビューしたカップルです。

男性は全日本ノービス選手権のアイスダンスで出場経験がある選手です。女性・男性共に初のシニアの全日本の舞台となります!

今季のリズムダンスの課題は“Music and Feeling of the Eighties”、直訳すると『1980年代の音楽と感じ』を全カップルがテーマにして作っています。

『She Drives Me Crazy』は1988年、『Jessie’s Girl』は1980年にリリースされた曲であります。

男性が背が高いというのもあり、3階席からもスケールが大きく見えました。

ノリの良い曲を男女ピッタリと動きを合わせて滑っていく姿に目を惹きました。これほど大きな舞台は初めてであろうかと思いますが、堂々と、踊っていく姿勢が素敵でした!

40.71

2.小松原美里/小松原尊選手組(コマツバラミサト/コマツバラタケル) 倉敷FSC

RD:映画『ゴーストバスターズ』シリーズより
RD振付:ロマン・アグノエル

『チームココ』の愛称で知られるカップル。2016年にカップル結成、2017年に結婚し公私ともにパートナーとなりました。男性はアメリカから帰化し、現在は国際大会では旧名『ティム・コレト』、日本では『小松原尊』として出場しています。北京五輪に出場を果たし、次の五輪を目指していく大ベテランカップルです!

映画『ゴーストバスターズ』シリーズの1番最初の作品は1984年公開なので、80年代のテーマに、まあ、沿っていますね。

コールの後、2人敬礼ポーズ

DiStで向かい合って女性が狙い撃ち、他にもゴーストバスターズのお馴染みのメロディーに合わせたユニークな振付が組み込まれてました!

最後のお辞儀も、世界観そのもの!着実にエレメンツをこなし、世界観を伝えるというミッションをコンプリートした達成感が伝わる!

最初と最後が比較的世間に知られている、馴染のある曲で安心感ありました。『あっ、ゴーストバスターズだ』とインパクトを残していきました。

楽しい演技でした!

70.89

3.田中梓沙/西山真瑚選手組(タナカアズサ/ニシヤマシンゴ) オリエンタルバイオ

RD:ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』シリーズより
RD振付:ロマン・アグノエル

今年結成されたカップル。『あずしん』として親しまれています。女性はシングルでジュニアグランプリシリーズに出場経験がありますが、アイスダンスそのものが初めてとなります。男性は2019年からシングルと並行してアイスダンスを始め、全日本ジュニア優勝、世界ジュニア選手権出場を果たしたことがある選手です。今年シングルを引退し、アイスダンスに専念しています。男女共、シングル・アイスダンスの両方で全日本出場を果たしました。

『スーパーマリオブラザーズ』は1番最初に発売されたのが1985年ですので、80年代というテーマに…まあ沿っていますね。

衣装からして、男性が兄マリオ、女性が弟ルイージという設定が伝わります。男女で組む競技は、男性はヒーロー、女性はヒロインを演じる中、女性も男性キャラを演じるところが非常に珍しい設定です。

ゴール後、進むような動きをしながらスタートポジションにつきました。

PDの時、男性、女性がそれぞれ、高く足を上げて滑るシーンに拍手も👏

最後は勢いありながら、エレガントに、正確にターンを踏んでいき、『It’s me Mario!!』で腕組んでフィニッシュ!

ユニークさと気品あふれる実施に、会場スタオベ!

71.08 SB トップに立ちました!

アイスダンスRD 第2グループ

4.佐々木彩乃/池田喜充選手組(ササキアヤノ/イケダヨシミツ) 日本大学/西武東伏見FSC

RD:Wake Me Up Before You Go-Go/ケアレス・ウィスパー/Wham Rap!(歌:ワム!(1・3曲目)/ジョージ・マイケル(2曲目))
RD振付:マリオン・デ・ラ・アソンション

今年結成されたカップルで、女性はシニアの全日本は初めて出場を果たしました!

1981年~86年にかけ活動したワム!の名曲メドレー。2曲目はジョージ・マイケルがカバーしたバージョンを使用しています。

女性の衣装が原色を使用したスタイルで、遠くからもはっきりと見えて、目を惹きます!

アクティブに滑り、ポップな踊りを披露していました!二人の表情が豊かなカップルという印象でした!

キスクラでは、コーチの一人砂山朱先生の生徒が代々抱えてきたくまのぬいぐるみがいました。

51.47

5.吉田唄菜/森田真沙也選手組(ヨシダウタナ/モリタマサヤ) 木下アカデミー

RD:ワイルド・チャイルド/恋はワイルド・シング/ワイルド・サイド
RD振付:歌:イギー・ポップ/X/モトリー・クルー

今年結成され、『うたまさ』の愛称で親しまれているカップルです。カップル男女共に、ジュニア時代に別のパートナーで全日本Jr.優勝、世界Jr.出場の実績があります。10月に行われた予選会では、優勝を果たして迎えた、初めてのシニアの全日本。

1曲目は1986年にリリース、2曲目は1965年に最初に発表されたものを、1984年にアメリカのバンドXがカバーしたものを使用、3曲目は1987年にリリースされた曲です。

冒頭、男性がいきなりバタフライして筆者はびっくりしました。

男女共スケーティングに勢いがあり、アップテンポに対してもピタッ、ピタッっと音と動きを合わせていける力に目を張りました!SqTwの中の3つ目のツイズルで男性が転倒するミスがありましたが、最後までビュンビュン飛ばしていく演技

持味のスピード感を存分に活かしたプログラム!女性のパンツスタイル、男女とも黒と赤がベースの衣装というのもあり、二人はF1レーサーかと思いました。スリリングな一時でした!

64.00

6.木下あかり/田村周彦選手組(キノシタアカリ/タムラタカヒコ) 慶應義塾大学/三田スケートクラブ

RD:女神達への情歌(報道されないY型(ケイ)の彼方へ)/いとしのエリー/希望の轍(歌:サザンオールスターズ)
RD振付:宮本賢二

2年連続2回目の出場のカップル。男性がこの春に慶應義塾大学を卒業し、一般企業に勤めながら競技を継続しています。

1曲目は1989年、2曲目は1979年、3曲目は1990年に発表された曲になります。厳密に80年代でなくても、その時代に近い雰囲気を出せばよいという解釈なのでしょうか。日本の80年代はこんな感じだったよねという、衣装や曲を選んできた印象です。

サザンオールスターズの曲を、フィギュアスケートで使うという斬新な発想です。日本語の曲で、世間に広く馴染みがあり、全日本という舞台であるからこそ、観客が容易に世界観を解釈しやすくなると感じました。

滑りは、同じ大学同士で年齢が近いこそだからできる信頼関係が、大きな持味のカップルです!呼吸をそろえ、安心してリフトが見られるそんなカップルです。

最後の希望の轍では、観客が容易にノリやすいので手拍子が起こり、インパクトを残していきました。爽やかな演技がとても素敵でした!

47.30

今季のRDは、1980年代付近の曲、映画、ゲームであれば良いということなのでしょうか。後で調べてみて、ゴーストバスターズ、スーパーマリオブラザーズは1980年代に最初に生まれたことを初めて知りました。作品背景、歌詞の意味を知ると、より観戦が楽しくなりますね。

続いて女子SP第1グループ1~5番の感想です。

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全日本選手権

【レビュー】全日本フィギュアスケート選手権大会 2023年 競技1日目 ペアSP,男子SP編

第92回全日本フィギュアスケート選手権競技1日目、ペアSPと男子SPの全選手・組の感想をまとめます

第92回全日本フィギュアスケート選手権大会
日程:2023年12月20日(水)~12月24日(日)
会場:ビッグハット(長野市若里多目的アリーナ)(長野県長野市)

まず、ペアSPからご覧ください↓

ペア

1.長岡柚奈/森口澄士選手組(ナガオカユナ/モリグチスミタダ) 木下アカデミー

SP:映画『ジャージー・ボーイズ』より『君の瞳に恋してる 』
SP振付:キャシー・リード

今年結成したペアです。女性の長岡選手は年々跳べる3回転ジャンプの種類が増え、北海道のJr.女子のエースとして台頭していた中で、今年ペアに挑戦している選手です。男性の森口選手は昨季はペアとシングルの二刀流、今季はほとんどペアに集中しています。

『君の瞳に恋してる 』はフランキー・ヴァリが1967年に出した名曲で、数々のカバーがある曲になります。今回は、映画『ジャージー・ボーイズ』で歌われたバージョンを使用していると考えられます。

サイド・バイ・サイドの3Lo、スロー3Sが鮮やかに決まって、会場のテンションが上がっていくのを感じました!軽やかなメロディーに合わせ、2人が弾むように歩く。そんな恋の物語が見える演技にスタオベ多数でした!

56.07 SB

ペアは三浦璃来/木原龍一選手組(木下グループ)が欠場となったため、1組のみの実施となりました。
引き続き男子SP第1グループ1~6番の選手の感想をどうぞ!

男子 第1グループ

1.高橋星名(タカハシセナ)選手 木下アカデミー

SP:映画『タッカー』より
SP振付:キャシー・リード

1つ下のカテゴリーのジュニアから推薦で出場を果たした選手です。今シーズンがジュニアデビューシーズンであります。昨年の全日本ノービス選手権のノービスAの優勝者でもあります。

初出場でいきなり1番滑走という状況の中、堂々とした滑りを披露したように感じました。様々な動きをスムーズにこなしながら滑っていました。音に対して、多様なポジションを決め、ジャッジにアピールしていました。指先からキラキラ輝くような、綺麗な所作が印象的でした!

68.28 SB

2.小田垣櫻(オダガキサクラ)選手 日本大学

SP:Luv Letter(演奏:DJ Okawari)
SP振付:岩本英嗣

今季シニアデビューし、全日本の最終予選である東日本選手権(日本大学は東日本所属になります)でFSで順位を大きく上げ、大逆転で出場権を掴み取りました。
小田垣選手の母でコーチでもある、小田垣香奈子先生は、現役時代全日本選手権に出場、NHK杯に出場経験もあります。そう、親子2代で全日本の舞台に立つことが叶ったのです!

母と川越正大コーチに送り出され、演技スタート。冒頭は今季意欲的に挑戦している3A!惜しくも転倒となりましたが、他のジャンプは着実に決めました!

小田垣選手の最大の魅力は、ただ音楽に身を委ね滑るだけで、観客をぐっと世界観に引き込めるところだと感じてます!最後のStSqはその持味を、全日本という大きな舞台で発揮しているところに感動しました!

54.55 SB

3.田内誠悟(タウチセイゴ)選手 富士FC

SP:Hidden Machinations(演奏:Eternal Eclipse)
SP振付:安藤美姫

ジュニアから推薦で出場を果たした選手です。今回が2度目の出場となります。JGPに出場経験のある選手です。

10月から世界選手権優勝経験のある安藤美姫先生に本格的に師事し、急ピッチで調整して、全日本という大きな舞台に立ちました。プログラムもSP・FS共に急遽作り変えました。

出来るジャンプを着実にこなしつつ、ダークな曲調、激しく鳴り響く音を捉えた演技が印象的でした!独特なしなやかさが3階席にも、はっきりと見えました!

63.89

4.蛯原大弥(エビハラダイヤ)選手 明治神宮外苑FSC

SP:Etude for the Dreamer(演奏:ジェニファー・トーマス)
SP振付:佐藤紀子

ジュニアから推薦で出場を果たした選手です。今季は大躍進のシーズン!JGPに2戦派遣され、いずれも3位表彰台に立つという活躍を見せています!全日本は今回が初出場となります。

冒頭のアクセルジャンプは、ここ最近は2Aに抑えていたところを、3Aに戻して転倒となりました。次のジャンプは3F+3Tにしていたところを3Loにしました。コンビネーションジャンプは3Lz+3Tに選択しました!ジュニアのSPのルールでは、シーズンによって単独のジャンプの種類が決められています。今大会はシニアのルールで行い、シニアはそのようなことがないのです。確実にSPを通過するため、本人の傾向を踏まえ、ジャンプ構成を大きく変える作戦に出たものと思われます。

蛯原選手は元々の踊り心に加え、大会での経験、様々な選手の良いところを吸収し、滑りに素直に反映する力の大きさに魅力を感じています。樋口新葉選手、住吉りをん選手、三浦佳生選手といった国際大会で活躍する選手と同じコーチに師事しているという影響も大きいと思われます。大会を重ねるごとに、演技に深みが増していき、観るのが楽しみになる選手です。

今回の演技は、ピアノの音色を繊細に、かつ力強く表していく姿が印象的でした!

61.85

5.周藤集(ストウツドイ)選手 ID学園高等学校

SP:Per Te(歌:ジョシュ・グローバン)
SP振付:キャシー・リード

ジュニアから推薦で出場を果たした選手です。今回が2度目の出場となります。今年の全日本ジュニア選手権で3位という立場で挑みます。

デニス・テン氏が憧れと公言していて、この曲はデニス氏かエキシビジョンで使用していた曲でもあります。選曲背景や、練習には先ほどのこともあるのかもしれません。

周藤選手は、肩甲骨から差し出される腕の動き、大きな上体のしなりから生み出される演技に泣かされるのですよ!曲が最も盛り上がるところで配置したStSqでは、持味を最大限堪能できるところです。この動きに、毎度毎度感動させられます。

74.61 SB

6.西野太翔(ニシノタイガ)選手 神奈川FSC

SP:帰ってほしいの(歌:ジャクソン5)
SP振付:佐藤操

ジュニアから推薦で出場を果たした選手です。今季がジュニアデビューであります。

ジャクソン5の名曲を中学2年生という今だからこそ演じられる選曲だと感じてます!

2本目のジャンプを3F+3Tにしていたところを、3Lz+3Tに変更しました。これも蛯原選手の時に触れた、ジュニアSPのルールの縛りがなくなったことを受けた変更だと思われます。最後のジャンプは3Fを狙ったものの2Fになり、シニアの場合は無得点となります。

ノリノリに踊ると同時に、所々で体幹の強さを感じさせる動きに驚かされます!たとえばStSqの際に予想外のタイミングで足を高く上げるところですね。

FSでは、一転してダークさと繊細さを感じる、対照的なプログラムとなっているので、ぜひというところです!

50.77

次は第2グループ7~12番の感想です。

カテゴリー
東日本フィギュアスケート特別講座2023

【2023年版】東日本フィギュアスケート特別講座 長谷川一輝 編

こんにちは!大学院修了フィギュアスケートファンのLenaです!

今年は諸事情により、東日本概論シリーズは執筆していません。なのに、5月13日にブログを更新するということは…そう、これだけは開講させていただきます!!

本日(5/13)は東日本概論シリーズの北海道男子編の常連長谷川一輝選手(東京理科大学)22歳のお誕生日です!!!
おめでとうございます🎉

毎年恒例、今年で5回目となりますね。毎回概論シリーズで紹介しきれない!!という熱量をここにぶつけています。
長谷川選手について、とことん語る回にします!!
(過去同シリーズは→2019年2020年2021年2022年)

ただ、1つご注意お願いします。有り余るエネルギーの結果、情報量が多くなり長文となりました。引かないでください。…最後の忠告です。本当にご興味ある方のみ、読み進めてください。

本当に、本当にご覧になりたい方は、
☑データ
☑トピックス
☑スケーターとしての魅力
☑SP・FSそれぞれのプログラムについて
この4点から講義を進めます。それでは行きましょう!

データ

2022-23シーズンデータ(※敬称略,5/5時点で公表されているもの)
生年月日:2001年5月13日
学校:東京理科大学
所属クラブ:明治神宮外苑FSC・東京理科大学フィギュアスケート部
コーチ:横谷花絵
国体代表:北海道
プログラム
SP Happy(Chartbeat-Version)
FS The Beatles Concerto
プログラム振付
SP 横谷花絵
FS 横谷花絵
成績
第60回北九州オープンフィギュアスケート競技会 選手権男子 2位
2022年 東京夏季フィギュアスケート競技大会 シニア男子 3位
2022年東京選手権 男子 7位
第16回東日本学生フィギュアスケート選手権大会 7,8級男子 2位
第48回東日本選手権大会 2位
第91回全日本選手権大会 22位
第94回日本学生氷上選手権大会 フィギュア競技 7,8級男子 8位
第77回国民体育大会冬季大会 スケート競技会 フィギュア競技 成年男子 14位
第50回関東学生フィギュアスケート選手権大会 7,8級男子 3位

今季のトピックス

北海道から上京し、明治神宮外苑FSCに移籍し早3年目。懸命に勉強したとしても、進級が難しいと言われる東京理科大学の3年生として2022-23シーズンを迎えました。

今季は8月上旬の飯塚杯がシーズン初の大会となりました。北海道時代は、8月下旬の『SAPPORO CUP』でシーズン初の大会だったため、今までで一番早いシーズンインとなりました。
そこから東京夏季フィギュア、クラブのエキシビジョンに出演し、ブロック前の密度が濃かったかと思います。

そうそう、今季はフィギュアスケート大きなルール変更が行われましたね。とりわけスピンのレベルの取り方が変わり、多くの選手が試行錯誤を重ねました。スピンを得意としている長谷川選手も例外ではありません。

ジュニア時代からほぼ同じ構成を貫いていたCCoSpを大きく変えなければならなくなりました。
長谷川選手のCCoSpは、SForSS→NBP→足替え→キャメル基本姿勢→シット基本姿勢→US(足替え後3つの基本姿勢達成)というレベルの取り方をしていました。それが、足替え後の3つの基本姿勢でレベルを取れなくなり、更に新ルールでレベル4必須条件が無いという状況になりました。

そこで、飯塚杯から東京ブロックにかけ、スピンにおいて様々な試行錯誤を積み重ねていました。

飯塚杯では、FCSpは主にジュニア時代の構成で、キャメルサイドのポジションがドーナッツではなく、T字に近いものを取り入れていました。CSSpが、難しい入り→スピン中のジャンプ→足替えはこれまでとは変わらず、シットフォワード→チェンジエッジを入れました。足替え後は昨季FSのFCCoSpの1回目の足替え後と同じでしたね。CCoSpで、シットビハインドから直ちにキャメルアップワードという難しい姿勢変更を初めて取り入れました!
FSはCSSpはSPと同じ構成、CCoSpは足を替えたあとキャメルサイドをやろうとして上手くいかず、そのあとお得意のトンプソンをやっていました。FCCoSpは足を替えたあとが昨季から変わり、シットサイドから非基本姿勢でレベルを取り、もう一度足を替えてバックスクラッチするのは昨季とは変わっていません。

結果は中々上手くレベルが取れないというところになった模様です。

9月のエキシビジョンは、SPを披露しました。
この時、CSSpとCCoSpの構成が以下の通りに大きく変わりました!
CSSp 難しい入り→スピン中のジャンプ→シットビハインド→足替え→シットサイド→難しい出 CCoSp キャメル基本姿勢→シットフォワード→チェンジエッジ→ジャンプして足替え→アップライトストレート
難しい出を初めて導入したのが、個人的には嬉しいところです!

東日本までには(東京ブロックはFSはキスクラでの会話から、本来実施する予定の構成とは違ってたみたいです)、(○→レベル取り要件、◎→レベル4必須要件)
SP
FCSp バタフライ◎→CF○→CU○→CS○
CSSp 難しい入り○→シット基本姿勢→スピン中のジャンプ○→SB○→足替え→SS○→難しい出◎
CCoSp キャメル基本姿勢→SF○→CE◎→ジャンプして足替え○→US○
FS
CSSp 難しい入り○→スピン中のジャンプ○→SB○→足替え→SF○→CE◎
CCoSp SB→CU○の難しい姿勢変更◎→足替え→US○→難しい出◎
FCCoSp バタフライ◎→CF○→足替えで左→SS○→NBP○→足替えで右→アップライト基本姿勢
という構成になりました。(字数の都合上記号解説なくてすみません…)ルールに対応させるだけでなく、CSSpとCCoSpはSPとFS共に同じレベルの構成にしても大丈夫にも関わらず、別の構成にしているのもまた不思議なところです。

一昨年の全日本で、理系すぎる趣味・特技欄を書いて話題となりましたね。今季はブロックで見せましたね…『特技 両手トリル、趣味 家計簿をながめる』!両手トリルはリズムゲームの用語です!家計簿をながめるは、ジュニア時代に『特技 そろばん』と書いていたことがつながっているかと考えます。東日本以降は、特技がPC組み立てに変わり、フジスケのHPでは自作のPCを紹介してました!!

10月の東日本インカレで、FSで132.74を出し、見事2位に輝きました👏シニアカテゴリーでは自己ベストを更新、2018年フリースケーティング大会で出した自己ベスト132.77にあと少しに迫る高得点でした!!この時はジャンプ8本、ジュニアプログラムでしたので単純な比較は出来ませんが…久々にFSで130点を超えました!!この時無観客でかつ、中継が無かったため、一般が見れる機会が無いのが非常に悔やまれるところです…
約2週間後に同じ会場で行われた東日本では、この大会上位4人のみ全日本に行けるという厳しい戦いとなりました。『ボーダーになりかねない状況』という中、SPは3位、FS2位で総合2位で3年連続で全日本選手権出場権を獲得しました!!SPはジャンプをすべて揃えました。FSは2A+3Tの着氷で堪え、2Aから3連続ジャンプをするはずが単独になってしまい、『根性で!!』と1番最後の3Lzに2T+2Loを付けてリカバリーしました!!Jr.時代に3F+2T+2Loを構成に入れて成功させたこと、リカバリーで3S+2T+2Loを決めたことがありますが、3Lz+2T+2Loは本番で見たことがなかったのです!!惜しくも2Loにqマークが入りましたが、緊張する中熱い演技を披露しました!東日本の会場は2017年の全日本Jr.選手権で7位となり、あと一歩でSr.の全日本を逃した場所であります。本人は意識していたかは不明ですが、5年前のリベンジを果たしました。
更に、今年1月にアメリカで行われたワールドユニバーシティゲームの第3補欠にも選ばれました👏

12月の全日本選手権では、なんと3年連続でSP17番滑走を引いたのです!!本番はジャンプを揃え、スピンのレベルの取りこぼし等ありましたが、SP18位となり初めてFSで第2グループで滑りました。

年明けすぐにあったインカレは、北海道苫小牧市で行われました。苫小牧は長谷川選手が北海道時代によく練習をしていた場所でありました。札幌市は通年リンクが2箇所あるものの、他競技の方が盛んな地であり練習環境が厳しく、札幌近郊のリンクに足を運んで練習を行っていました。そう言えば、同じ苫小牧市内のリンクで、長谷川選手が高校3年生の時に、兄弟子であった羽生結弦さん(羽生さんの最初のコーチである山田真実先生が、長谷川選手の北海道時代のコーチ)の練習を見学しましたね。その後のインタビューで、非常に刺激を得たと述べています。
全日本のFSでミスが目立つ演技となり、休まずに練習を積重ねて挑みました。1番滑走という状況の中、ジャンプ7本を全て揃え、GOEでマイナス評価が1つも無い演技を披露しました!!
本人も控えめなガッツポーズを見せていました!個人で8位入賞を果たしました!

同じ月の国体からSPで、これまでは2Aだった3Aに挑むことになりました。FSは一般客が入れる時間に行われた公式練習で、綺麗に成功させる場面があったものの、本番では回避しました。

4月に、毎日新聞の朝刊の連載『学校とわたし』にてインタビュー掲載されました。著名人が学校生活を振り返るというコンセプトの連載となります。フィギュアスケートでは、壷井達也選手(シスメックス)が掲載されたことがあります。これまで『文武両道』をモットーにしてきた長谷川選手、その高校生活、一般受験をして大学に入ったこと、競技について語られていました!生まれは神奈川で、北海道育ちと紹介されていました。遅くとも小学2年生までには、札幌に移り住んでいて、大会に出場しています。
あっ、有料記事ですので、これ以上内容を話すのは控えておきましょう。

無事に4年生に進級を果たしました!
GW中に、リンクの一般滑走中にエキシビジョンを行う企画に出演しました!なんと最終日の1番最後、大トリを務めました!
北海道時代は3月に大会が終了し、8月まで試合が無く、人前で演技する機会はありませんでした。5月に観客を前にして演技を披露するのは初めてだったことでしょう。
直前の練習では、3Aに挑み着氷でステッピング・アウトしていました。今季SPを披露し、本番で綺麗に成功させました!
クラブの後輩達からの熱い応援を受け、終始笑顔で滑り、リンクが大きく盛り上がる演技で締めくくりました!

続いては、魅力について語ります↓


スケーターとしての魅力

スケーティング1つ取っても、スピン1つ取っても、ジャンプも、時々驚くような技を飛び出してくるところも、所作1つ、音の捉え方1つもどれも魅力的で…だからこのような講座を開いているのですよ!!!

どの観点から見ても、1つ行き着くのは
持っている高い能力をフルに活かしている
ということでしょう。

東日本選手権で解説を務め、長谷川選手が北海道時代に同じクラブに所属していたことがある鈴木潤さんは
・元々身体能力が高い
・全ての要素を卒なくこなす

とコメントをしていました。
小学生時代に野球をやっていて、フィギュアスケートをあまりやっていなかったものの、山田先生が能力を見て、フィギュアスケートに懸けた方が良いと見出した経緯があります。
運動神経の良さ、関節の柔らかさが、3Aまでマスターし、あっと驚くほど高いジャンプ、姿勢が美しく、最後までスピードが落ちないスピン、スケーティング等に活かされていると考えています。高い基礎を身につけられるから、意表を突くような技が出来るのかもしれないです。今季はSPは開脚ニースライドであったり、昨季SPはニースライドしながら足を上げたり、過去にはシットの姿勢でツイズルしていたら突然ウィンドミルして入るCSSpを披露してました。イーグルが得意で、多彩な手の振付付きでプログラムのアクセントとして取り入れています。

エレメンツだけでなく、表現の面において
長い手足を活かしてスケールが大きくかつ、品のあるに見入ってしまいます!姿勢の良さ、プロポーションも相まって、実際の身長より10cm以上大きく見える滑りが出来る選手であります。
あと、どんな曲もモノにし、情感豊かな演技にしていきます。音を素早く掴み、動きに変換するのが上手い選手だと感じています(両手トリルが特技なのも、この能力のおかげかもしれません😁)。所作が綺麗なので、あらゆる曲調に対応でき、魅力あふれる演技を披露できるのかと考えてます。

横谷先生は上品な動きと、曲の盛り上がりに合わせて振りを組み立てていき、印象に残るようなプログラムが多いと感じています。
ここに長谷川選手の元からの良さが加わったら、どうなることでしょうか?間違いなく最強です!

神宮に移籍してから、音を捉え、自分の伝えたい思いを振りで明確に示していく姿勢が見え、よりドラマチックな演技に感じているこの頃です。この先どこまで進化した姿を魅せれるのか、楽しみになるスケートだなと感じています。


次のページでは、今季SPとFSについて語ります!!まだまだ!という方はぜひ、クリックしてください!

カテゴリー
東日本フィギュアスケート概論2022

【2022年版】東日本フィギュアスケート概論 第11講 栃木編

こんにちは!大学院修了フィギュアスケートファンのLenaです!

東日本フィギュアスケート概論シリーズ第11講、栃木編を始めます!(過去同シリーズは→2019年2021年)
依然有観客での大会が限られる中、2021-22シーズンは五輪もあって、フィギュアスケートに注目が集まりました。一ローカルフィギュアスケートファンとして、普段拝見する機会が多い東日本の選手の魅力をもっと知ってほしいと、講義という名のもと、記事を書かせていただきます!

北海道から始まったこの東日本概論シリーズ、第9講の長野・山梨編から関東ブロックの紹介に入っています。第10講は茨城編で、第11講の今講座は当初『栃木・群馬編』で予告してましたが、都合上栃木と群馬で独立して講義をすることになりました。全中・インハイ・国体を栃木代表で出場した選手を紹介します。

(これまでの講義の一覧はこちらから)

※所属クラブは2022年7月時点で、一般に公開されているものを基準にしてます。プログラム名は2021-22シーズンのものを表記してます。

それではいきましょう!!!


No.57 丸山英希選手 (マルヤマ ヒデキ)

所属 栃木県スケート連盟
プログラム
SP 映画『アラジン』より
FS 映画『シャーロック・ホームズ』より
昨季主な成績
第71回全国高等学校スケート選手権大会 22位

栃木県内の高校に通い、埼玉県にあるリンクに所属するコーチに師事している2年生の選手です。今年2月に行われたインターハイではバッジテスト5級ながら、決勝(FS)進出を果たしました。その後6級を取得したため、今季からブロックでジュニアカテゴリーにエントリーできるようになりました。

今成長著しい丸山選手。軽いフットワークから、踊り心溢れる演技が強く印象に残る選手です。

昨季のSPは、『フレンド・ライク・ミー』を中心に使っています。フレンド・ライク・ミーの部分に切り替わった途端、ひょうきんなジーニーが見えてきます。1番最後にステップシークエンス(StSq)を配置して、ジャッ時アピールをビシバシ決め、軽快な演技が魅力的でした。今季は新しいプログラムに変えて挑む予定です。どんなプログラムなのか楽しみです。

昨季のFSは、1番最初のエレメンツにフライングシットスピン(FSSp)を配置した少々珍しい構成となっております。最後まで体が動き、一つ一つのポーズをしっかり決め、持前の踊心を発揮したプログラムが印象的でした。

それでは、参考までに2022年インターハイの公式アーカイブ映像をご覧ください↓

参考
出典:日本スケート連盟HP 地方競技会 神奈川
関東・サマートロフィー2022 エントリー クラス細分結果 7月9日 訂正版
映像
出典:インハイTV YouTubeチャンネル
SP(3:30:02~3:35:00、指定された時間から再生します)
FS(32:51~38:42、※解説有、指定された時間から再生します)

今季本格的にジュニアにデビューするので、大会で演技を拝見できる機会が増えるのが楽しみです。どうかステイヘルシーに、思う存分に滑れることを願ってます。

No.53 平田大和選手 (ヒラタ ヤマト)

所属 宇都宮フィギュアC
プログラム
SP YAMATO(演奏:竜馬四重奏)
FS ミュージカル・映画『レ・ミゼラブル』より
昨季主な成績
第77回国民体育大会冬季大会 スケート競技会 フィギュア競技 成年男子 25位

栃木県内の大学に通い、今年度は4年生になり、現役ラストシーズンとして挑んでいます。宮城県出身で、宮城FSCに所属していました。高校進学と同時に宇都宮市に転居して以来、栃木代表の選手として活躍してきました。
バッジテスト6級と年齢の事に加え、コロナ禍とあり、大会にエントリーし演技を披露する機会がほとんど無い状況でした。今年1月の国体で、オンライン上とはなりますが演技を披露する事が出来ました。

栃木のエンターテイナー
として、ローカルファンに愛されている選手だと感じてます。
どんな時も、音に対して全力で応えていく演技を披露する選手です。

SPはお名前と同じ曲名を選びました。和楽器とヴァイオリンで構成する4人グループの曲です。しっとりとした和のメロディーから始まり、途中の掛け声からテンポアップする所で、音ハメのオンパレードが待ち受けるプログラムです。速いテンポを捉えた腕の振りが大きな見所です。1番最後の要素にStSqを配置し、最後までエネルギッシュに駆け抜けていく姿が強く印象に残ります。今季も継続して使用する予定です。

FSはドラマチックに、全力で世界観を描く姿に感動するプログラムです。終盤の民衆の歌を充て、StSq、コレオシークエンス(ChSq)はパワフルに、意思の強さを感じさせます。1番最後にダブルアクセル(2A)を配置し、ジャンプを降りた直後にフィニッシュする構成となっております。

アーティストの公式YouTubeチャンネルに投稿されているSPの音源のMVと、SPのみとなりますが、地元日光で行われた2022年1月の国体の公式アーカイブ映像をご覧ください↓

参考
出典:日本スケート連盟HP 地方競技会 神奈川
関東・サマートロフィー2022 エントリー クラス細分結果 7月9日 訂正版
音源
出典:竜馬四重奏オフィシャル
[MV]YAMATO / 竜馬四重奏
映像
出典:国体チャンネル
SP 1月25日スケート(フィギュア) (15秒のCMのあと)2:52:13~2:57:26

どうか望む道に進み、思い描くラストシーズンとなることを願ってます。もしも叶うなら、1つでも多くの大会で拝見できればと思っています。


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東日本フィギュアスケート概論2022

【2022年版】東日本フィギュアスケート概論 第10講 茨城編

こんにちは!大学院修了フィギュアスケートファンのLenaです!

東日本フィギュアスケート概論シリーズ第10講、茨城編を始めます!(過去同シリーズは→2019年2021年)
依然有観客での大会が限られる中、2021-22シーズンは五輪もあって、フィギュアスケートに注目が集まりました。一ローカルフィギュアスケートファンとして、普段拝見する機会が多い東日本の選手の魅力をもっと知ってほしいと、講義という名のもと、記事を書かせていただきます!

北海道から始まったこの東日本概論シリーズ、第8講で新潟編で東北・北海道ブロック編が完結しました。第9講の長野・山梨編から関東ブロックの紹介に入っています。第10講は茨城編です。全中・インハイ・国体を茨城代表で出場した選手を紹介します。

(これまでの講義の一覧はこちらから)

※所属クラブ等のデータは2022年3月時点で、一般に公開されているものを基準にしてます。4月から所属先等変更がある場合は併記します。

それではいきましょう!!!


No.50 花田実優選手 (ハナダ ミユウ)

所属 宇都宮フィギュアC
プログラム
SP コットン・アイ・ジョー
FS マラゲーニャ
今季主な成績
2021年関東選手権 ジュニア 12位
第42回全国中学校スケート大会 35位

茨城県内の中学校に通う3年生の選手です。隣県の栃木県内に本拠点に置くクラブに所属しています。今季がジュニアデビューシーズンでした。ブロック大会に、全中は茨城代表で出場を果たしました。

ひとたび演技を観れば、キレのある動き、そしてなんといっても
キュートなスマイル
に心を奪われること間違いありません。
リンクを目いっぱい使い、最初から最後まで踊っている姿が観ていて爽快な選手です。
エレメンツ面での成長が著しく、昨季はトリプルジャンプを組み込んでいなかったとことが、今季サルコウを決め、更に全中ではループとフリップに挑んでいました。

SPは現役時代親日家のスケーターとして知られていたショーン・ラビットさん振付です。北米の民謡として知られている曲で、黄色いフリンジが沢山付いた衣装がまず目につきます。
アップテンポな曲に合わせ、最初から最後まで動きまくる、踊りまくる、とにかく可愛い!!と言いたくなるプログラムです。
フィニッシュでピストルを撃つような振付は反則ですと言いたくなります。

FSは冒頭に口ずさみながら滑っているように見え、フラメンコの曲に合わせ、凜とした動きが印象的なプログラムです。

今年度は進路の年となります。来季は、どんなプログラムを披露するのか非常に楽しみです。笑顔輝く演技を沢山拝見できる機会に恵まれることを願ってます。

No.51 塙雪月花選手 (ハナワ キララ)

所属 笠松FSC
プログラム
SP 月光(作曲:ルードヴィヒ・ベートーヴェン)
FS 舞台『リバーダンス』より『ファイヤーダンス』
今季主な成績
第77回国民体育大会冬季大会 フィギュア競技予選会 少年女子 30位
第71回全国高等学校スケート選手権大会 73位

茨城県内の高校に通う2年生の選手です。県内を本拠点とするクラブに所属し、全中、インターハイ、国体で茨城代表として活躍してきました。東京五輪では聖火ランナーとして走り、ブロック大会に2度出場した実績があります。

難しそうな動きをしてから高く飛ぶジャンプに、運動神経の良さ感じる動き、美しいポジションのスピン、音に合わせた演じ分けが光る選手です。

今季新しくしたSPは、クラッシックのピアノソナタに挑戦しました。前半の静かなメロディーではしっとりと、後半テンポが上がったところでステップシークエンス(StSq)を持っていき、情熱を感じ、メリハリの効いた演技が印象的でした。

FSは2021年8月に行われた『関東サマートロフィー 2021 エントリー・使用曲・コーチ一覧』によると、長きにわたって継続して使用しているものの予定でした。ただコロナの影響で観れる回数が制限され、今季も一般のファンの前(オンライン上を含む)で披露できる機会がないままとなりました。

SPのみとなりますが、2022年インターハイの公式アーカイブ映像をご覧ください↓

参考
出典:フジスケHP
関東サマートロフィー 2021 エントリー・使用曲・コーチ一覧
映像
出典:インハイTV YouTubeチャンネル
SP(1:43:58~1:49:27、指定された時間から再生します)

長きにわたり通年リンクの無い茨城で、コツコツと練習を積み重ねていました。来季は沢山拝見できる機会に恵まれ、一つでも多く成果を発揮できることを願ってます。

No.52 猪股早哉子選手 (イノマタ サヤコ)

所属 駒場学園高校→?
プログラム
SP ラ・ヴィ・アン・ローズ(歌:ルーシー・トーマス)
FS シェヘラザード→ユー・レイズ・ミー・アップ(歌 ケルティック・ウーマン)
今季主な成績
2021年東京選手権 選手権 20位
第77回国民体育大会冬季大会 フィギュア競技予選会 少年女子 4位
第71回全国高等学校スケート選手権大会 18位

3月に高校を卒業しました。明治神宮外苑スケート場やKOSE新横浜スケートセンターを中心に練習を積み重ねています。全中やインターハイは東京代表、国体は茨城代表で出場してきました。
過去に東日本ジュニア選手権に出場、インターハイで2年連続決勝に進出した実績があります。

一度見たら忘れられない
純白なスケーティング
が最大の持味です。深いエッジを使っていて、身のこなしが美しく、もうスケーティングだけであっても永遠に見続けたいと思わせる選手です。

今季新しくしたSPは、シャンソンに初挑戦しています。日本では『バラ色の人生』としても知られているエディット・ピアフの名曲を、ルーシー・トーマスがカヴァーした音源を使用しています。
まず、スタートポジションを取る時から目を惹きます。衣装のバックのデザインの良さが綺麗さを増しています。
歌詞を一つ一つ丹念に拾った動きで、思いを伝えていき、見ごたえのある演技でした。見惚れていたら、もう、あっという間でしたね。

最初のFSは今季新しくしたものです。スケートのタッチの柔らかさ、芯の強さが曲とマッチしていて、もはや幻想的でした。透明感あり、優しく、可憐な演技が印象的でした。
インターハイの時までには、2017-18シーズンの途中から2020-21シーズンまで長きにわたって使用したプログラムに戻しました。美しいヴォーカルに合わせ、優雅に奏でるような滑りが極上の一時に感じることでしょう。猪股選手と言えばこのプログラムとなりましたね。

出典:インハイTV YouTubeチャンネル
SP(29:39~35:42、指定された時間から再生します)
FS(57:21~1:04:26、※解説有、指定された時間から再生します)
※ジュニア課題での実施

この春から大学生になったということで、進路が気になるところです。来季以降どんなプログラムを披露するのか楽しみにしてます。どうかステイヘルシーに、充実した大学生活とスケート人生となりますように。


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東日本フィギュアスケート概論2022

【2022年版】東日本フィギュアスケート概論 第9講 長野・山梨編

こんにちは!大学院修了フィギュアスケートファンのLenaです!

東日本フィギュアスケート概論シリーズ第9講、長野・山梨編を始めます!(過去同シリーズは→2019年2021年)
依然有観客での大会が限られる中、2021-22シーズンは五輪もあって、フィギュアスケートに注目が集まりました。一ローカルフィギュアスケートファンとして、普段拝見する機会が多い東日本の選手の魅力をもっと知ってほしいと、講義という名のもと、記事を書かせていただきます!

北海道から始まったこの東日本概論シリーズ、第6講第7講は宮城、第8講で新潟編で東北・北海道ブロック編が完結しました。第9講の今講座から関東ブロックの紹介に入ります。まずは長野と山梨からです。長野と山梨それぞれの県のスケート連盟に所属選手(3月まで含む)や、全中・インハイ・国体代表歴のある選手を紹介します。

(これまでの講義の一覧はこちらから)

※所属クラブ等のデータは2022年3月時点で、一般に公開されているものを基準にしてます。4月から所属先等変更がある場合は併記します。

まずは長野の選手からいきましょう!!!


No.43 井口せな選手 (イグチ セナ)

所属 東海大諏訪高校
プログラム
SP River Flows in You(演奏:イルマ)
FS 映画『ロミオとジュリエット』より
今季主な成績
2021年関東選手権 ジュニア 11位
第77回国民体育大会冬季大会 フィギュア競技予選会 少年女子 13位
第71回全国高等学校スケート選手権大会 39位

長野県を主に練習を積み重ねる高校2年生の選手です。
2018年に長野県で行われたアイスショー『Heroes & Future 2018 in NAGANO』でソロ演技を披露、全中・インハイ・国体で長野代表として活躍してます。

ディープエッジで滑りつつ軽やかで、エレガントな所作が随所に光り、どの瞬間も見所な演技を披露する選手です。

今季はSP・FS共に新しいプログラムにしました。

SPはピアノの美しい音色を繊細に拾った滑りが目を惹きます。冒頭からの動きに注目していたいです。しなやかな動き、清らかなスケーティングと美しい一時を描く姿が印象的です。

FSはフィギュアスケートでは王道のプログラムを選びました。1番最後のエレメンツにジャンプを持っていき、着氷してすぐにフィニッシュポーズを決める構成となっております。
優美な所作でドラマチックに描く演技が印象的でした。

SPのみとなりますが、2022年インターハイの公式アーカイブ映像をご覧ください↓

出典:インハイTV YouTubeチャンネル
SP(1:01:01~1:06:40、指定された時間から再生します)

指先までしっかりと綺麗で、観て気持ちの良い選手ですね。今はリンクが閉鎖している時期となりますが、どうか上手く練習でき、また来季演技を拝見するのを楽しみにしてます。

No.44 大久保政宗選手 (オオクボ マサムネ)

所属 長野日大高校
プログラム
SP 映画『ヘンリー五世』より
FS 映画『遥かなる大地へ』より
今季主な成績
2021年関東選手権 ジュニア 3位
第38回東日本ジュニア選手権 12位
第77回国民体育大会冬季大会 フィギュア競技予選会 少年男子 9位
第71回全国高等学校スケート選手権大会 30位
第77回国民体育大会冬季大会 スケート競技会 フィギュア競技 少年男子 22位

長野県内にある私立高校ではトップの進学校に通いながら、競技に取り組んでいます。4月から2年生になりました。
2018年に長野県で行われたアイスショー『Heroes & Future 2018 in NAGANO』でソロ演技を披露、2020年全日本ジュニア選手権に出場した実績がある選手です。

大久保選手の演技を見ると真っ先に
ノーブルさ
が印象に残ります。所作が非常に上品で、なぜだか光って見えるのですよ。エレメンツの間に多彩な技を取り入れ、それらをシームレスに滑りこなし、見ごたえのある演技を披露しています。

昨季は2種類のトリプルジャンプだったところを、トリプルルッツ(3Lz)を構成に組み込む大会もありました。今季はSP・FS共に新しいプログラムにしました。

SPは、鍵山優真選手(オリエンタルバイオ/中京大学)の振付を多く手掛けていた佐藤操先生に初めて依頼しました。
スタートのポーズからスマートさが満ち溢れ、上品な所作を活かした振り付けの数々に見惚れていきます。群衆のコーラスの曲にステップシークエンス(StSq)を充て、盛り上がる所でイーグルは大正義!と言いたくなるのですよ。もう、映画のタイトルの通りの王子様です。

FSは前のFSと同じく、駒場幸大先生が振り付けました。前回は映画『ミッション』よりの『ガブリエルのオーボエ』が流れていたら、最後の最後で映画『アンタッチャブル』よりのサウンドトラックが流れて観客を驚かせてしまうプログラムでしたね。今回は映画『遥かなる大地へ』より『The Land Race』を中心に使用しています。
スタートのポーズから凛々しさが伝わってくるでしょう。バレエジャンプをしてからジャンプなどを、常にアクティブな振り付けをこなしながら、壮大なドラマを描く姿が強く印象に残ります。正統なカッコよさに溢れるプログラムです。

どんな演技なのか気になるかと思いますよね。ここはぜひ、2022年国体の公式アーカイブ映像をご覧ください↓

出典:国体チャンネル
SP 1月24日スケート(フィギュア) (15秒のCMのあと)7:04:22~7:09:53
FS 1月25日スケート(フィギュア) (15秒のCMのあと)3:38:25~3:44:21

真面目で、品の良い演技がもう眼福ですね!来季もどうかステイヘルシーに、磨き上げた演技を披露できることを願ってます。

No.45 入江美友選手 (イリエ ミユ)

所属 Mエイトクラブ
プログラム
SP サーカス『O』より(演奏:シルク・ドゥ・ソレイユ)
FS 映画『ちはやふる ‐結び-』より『つながれ つながれ! つながれ!!』
今季主な成績
2021年関東選手権 ノービスA 3位
第25回全日本ノービス選手権大会 ノービスA 12位
第42回全国中学校スケート大会 15位

長野県内の学校に通い、山梨を主な拠点とするクラブに所属する中学2年生の選手です。来季から本格的にジュニアに参戦します。
全日本ノービス選手権に2年連続で出場、今季はブロック大会で表彰台、更には全中では長野県代表として出場し、FSに進出と飛躍のシーズンとなりました。

腕の動きの美しさがとりわけ目を惹き、表情豊かな演技が持味の選手です。昨季はトリプルジャンプがサルコウと1種類だったところを、ルッツとフリップを構成に組み込んで一気にレベルアップしました。

全中で一般のファンの前(オンライン上)で初披露となったSPは、シルク・ドゥ・ソレイユのサーカス演目『O』より2曲をつないだ音源を使用してます。前半は、綺麗な音色を拾って、しなやかに動き、後半『Tzelma』の所でStSqを充て、全身を大きく使い、躍動感溢れる滑りを披露するというメリハリが印象的でした。

今季新しくしたFSは、競技かるたを主題にした映画のサウンドトラックの中から1曲のみを使用しています。スケートでちはやふるの使用は珍しいです。
膝立ちの状態からスタートし、柔らかな音楽に合わせ、情景を伝えていく演技が印象的でした。おそらく、かるたをしている中で感じたことを表現しようとしてるのではと思いました。

来季から本格的にジュニアに参戦するということで、どんな演技を披露するのか楽しみにしてます。どうかステイヘルシーに、来季も力を発揮できますように。


長野は以上です!綺麗なスケーティングと所作の両方で魅せる選手が多いと感じています。
次のページは山梨の選手の紹介です。ぜひご覧ください💨