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東日本フィギュアスケート特別講座2023

【2023年版】東日本フィギュアスケート特別講座 長谷川一輝 編

2023年5月13日、本日は男子シングル長谷川一輝選手(東京理科大学)22歳のお誕生日を迎えました!毎年好評の『特別講座』を今年も開設しました。ぜひご覧ください!

今季プログラム

SPHappy(Chartbeat-Version)
歌:サイモン・マーロウ
振付:横谷花絵

今季新しくしたプログラムとなります。
映画『怪盗グルーのミニオン危機一発』のテーマ曲で、ファレル・ウィリアムスが歌った曲を、ベルギーを拠点に活動する『キャピタル・ダンス・オーケストラ』が演奏、サイモン・マーロウが歌ってカバーした音源を使用しています。
アップテンポの曲を使用したのは2019-20シーズンSP『マラゲーニャ(演奏:ブライアン・セッツァー)』以来です。ジャズ系の曲の使用は、2015-17シーズンSPのミュージカル『トップ・ハット』より『踊るリッツの夜』以来となります。

予定エレメンツ構成は
2Aor3A、3Lz+3T、FCSp、CSSp、3F、StSq、CCoSp
昨季SPから半分ほど構成を入れ替えました。
冒頭にアクセルジャンプを配置し、全日本までは2A、国体以降は3Aに挑戦しました!国体と関東インカレでは3回転半回しきって転倒、神宮エキシビジョンで見事成功を果たしました!

20代前半らしい、明るく、お洒落な滑り

今までありそうで無かったイメージ
のプログラムという印象を感じました。

今まで長谷川選手のプログラムは、実年齢以上のイメージが浮かび上がる曲を滑っていました。2018-21シーズンのFS,映画『カサブランカ』よりと、2020-21シーズンのSP『Anthem(from “Chess”)』が分かりやすい例となります。カサブランカは、第二次世界大戦中、バーのマスターが突然別れた恋人と再会するというストーリーです。ミュージカル『チェス』は冷戦時代に、旧ソ連のチェスのチャンピオンが西側に亡命したという実話に基づく話であります。劇中で、今まさに亡命する時に歌われたのがAnthemだったのです。歴史的な背景や、ストーリーを考慮し、カサブランカは17歳~19歳、Anthemは19歳で滑っていたとなると、かなり大人びた印象を与えていましたね。

…脱線してしまいましたね。はい、元に戻すと…
今なぜ、実年齢にふさわしい感じになる理由は、選曲が大きな影響を与えていると考えています。
元々は、ミニオンシリーズの曲だったということで、子どもが分かるような、口ずさみやすく、受け入れられやすい曲になっています。5月のエキシビジョンで、体験教室で来ていたであろう親子連れが演技を見て、『あれ?Happy??』という声も聞かれました。
『Love』等、大人なイメージさせるような言葉が無く、比較的易しい言葉で使われています。
何が起きたって平気さ、だって自分は幸せだからさ
っと、自信に満ち溢れた内容の曲です!もしかしたら、コーチからのエールも込められているのかもしれないですね。
ただ、このままでは幼い子のイメージとなってしまいますね。では、なぜ20代前半の要素になっているのかというと、原曲ではなくカバー曲を使用したからです。
原曲では、細く、高い声の男性ボーカルでポップな演奏でした。カバー版では、太く、低い男性のボーカルで、それに合わせてキーを下げ、ジャズオーケストラによる演奏によって、大人っぽさが足されたように感じると考えるのです。子ども向けの曲と、大人の要素、2つの対極的なものを足し合わせたら20代前半なイメージの曲に感じますね!
原曲と、今回使用している音源と、両方YouTubeで、アーティストの公式チャンネルからMVが公開されているので、外部参照のコーナーからご視聴ください!

曲に合わせて、お洒落に、粋な振付が盛り沢山、次何が出てくるのかワクワクするプログラムでした!
とりわけ手の振付が多彩で、見所満載でした!まず冒頭からニヤリと笑ってから、ノリノリな振り付けを披露していきます!指パッチンのような振り等からのアクセルジャンプ降りた直後から曲が盛り上がり、直前まで踊って、コンビネーションジャンプからの、バタフライしてからもう1回バタフライしてFCSpとテンポよく進んでたら突然止まって…そうしたら手をクルクルとして弾けて踊りだす!からのCSSpとなります!
CSSpのあとから間奏が始まり、両足でクルクル回ってからの3Fからの、StSq!クラスターからのハイジャンプから始まり、パラパラと手拍子が鳴る中で、次々と振付が飛び出ていきます!そう言えば手拍子が起こるような曲使うのも久しぶりとなりますね。途中でボーカルが再び入ると、演奏がピチカートが入って少し静かめな印象になります。そして一瞬無音の所でバレリーノ並みに前後に開脚してスライドしてから、すぐに立ち上がるという驚きの技を披露するのが長谷川選手らしいところですね!エンドに手の振り入れながらインサイドイーグルも印象に残るシーンです!CCoSpを回ってフィニッシュです!

コーチが振り付けしているということもあり、毎回毎回細かい振りが変わっています。今回のSPに関してはそれが強く表れています。
例えば、最後のポーズが飯塚杯の時と、シーズンが進んでからでは大きく違ったり…StSqは飯塚杯と全日本の頃では違っています。どこが変わったか、よくよく観るのも楽しいですね!
あと、衣装は飯塚杯とクラブのエキシビジョンでは昨シーズンの衣装でした。東京ブロックで新衣装で登場しました。七分丈までの袖まくり風が、次の東日本では肘上までまくり上がってました!!腕を見せることで、多彩な手の振付が際立ちました!

弾けるような振付が沢山散りばめられた中で、シニア男子らしい滑りが加わり、笑顔になるようなプログラムです!そんな姿で魅せるのもこれまでありそうで無かった長谷川選手のスタイルですね。
次はFSにいきましょう!


FS曲名:The Beatles Concerto
作曲:ジョン・ラター
振付:横谷花絵

昨季からの継続のプログラムとなります。
ビートルズの名曲を、2台のピアノと、オーケストラを用いて繋ぎ合わせ、クラシックな協奏曲にまとめ上げた曲を使用してます。
『流れるような綺麗な曲』を本人が『得意』とし『突き詰めていける』と昨季選んだこのプログラムを、継続することにしたのです。

先日引退した髙橋大輔さんがシングル時代だった2013-14シーズンFSで使用した『ビートルズ・メドレー』の一番最後にこの曲の第3楽章の最後の部分が使用されています。この曲単独でしたら、小塚崇彦さんが2007-2008シーズンのFSに第1楽章をメインで使用した例があります。

長谷川選手の場合は、第3楽章のオープニング→第1楽章の最初に出る『エリナー・リグビー』→CSSpのあとから第1楽章『イエスタデイ』→StSqのあとから『オール・マイ・ラヴィング/シー・ラヴズ・ユー/エリナー・リグビー』→3S(の予定)を降りたあとから第3楽章の最後にとんで『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』のほぼ4部構成となります。

予定エレメンツ構成は、昨季は
3Lz+3T、3A、3Lo、CSSp、3F+3T、StSq、2A+2T+2Lo、CCoSp、3S、3Lz、ChSq、FCCoSp
でした。
今季は予定構成として提出したものは、
3Lz+1Eu+3F、2A+3T、3Lo、CSSp、3F、StSq、2A+2T、CCoSp、3S、3Lz、ChSq、FCCoSp
となっていました。
冒頭今まで取り入れたことが無い3連続ジャンプを書き、3Lz,3Fの2本構成にしたのです。実際に、飯塚杯の6分間練習で、3Lz+1Eu+3Fを飛んでいた場面が映っていました。映っていた時は3Fが両足着氷となり、本番は2Lz+1Eu+Sとなってしまいました。
東京夏季、東京ブロックは
3Lz+3T、2A、3Lo、CSSp、3F+3T、StSq、2A+2T+2Lo、CCoSp、3S、3Lz、ChSq、FCCoSp
と昨季の構成にほぼ近いプランで滑っていたと推察します。
ところが3F+3Tの3Tがダブルになりやすいのか、東インカレ以降は
3Lz+3T、2A+3T、3Lo、CSSp、3F、StSq、2A+2T+2Lo、CCoSp、3S、3Lz、ChSq、FCCoSp
に落ち着くことになりました。

最初は緊迫感あるメロディーで力強く滑り出します。3楽章のオープニング少しと1楽章の冒頭の曲に合わせ、ジャンプを3本組み込み、CSSpをバタフライで出てから、イエスタデイに曲が変わります。
そこからはしっとりとした滑りに切り替わっていきます。ここでの1番の見所はStSqです!イエスタデイの最も有名で盛り上がるところでのイナバウワー〜左回転のツイズル〜足を上げて〜右回転のツイズルという流れが最高です。花びらが舞っている情景が浮かび上がっていましたね。ホップしてランジの姿勢を取るところでStSqが終了、それを合図に曲がまた切り替わります。
冒頭と似たようなメロディーではあるものの、違ったタッチで力強く滑っていきます。3S(予定)を降りてジャン〜♪と鳴ったあとに、この協奏曲の最後のパートに切り替わります。髙橋大輔さんがこの部分をプログラムの最後に持ってきたことでも有名です。
ゆったりめな曲調の中で、3Lz(予定)を降りると…最大の魅せ場ChSqに入ります!拍手をしていたら大きく円を描く、アウトサイドのイーグルに加えて手の振付で大きな拍手が沸き起こっていきます。SPはインサイドイーグル、FSはアウトサイドイーグルという対比が個人的に好きなポイントでもあります!イーグルでお腹いっぱいなところから、ジャッジの目の前で特大バレエジャンプ!!!で更に強くインパクトを付けます!意外なことに、今の時代でバレエジャンプを取り入れる選手が少ないです。全日本の解説で、無良崇人さんが『意外と難しいのですよ。1回足を開いてから、閉じなきゃいけないので。』と2年連続で言及していました。バレエジャンプ降りてから、バタフライからFCCoSp、最後は高速バックスクラッチでフィニッシュします。

余談ながら、ChSqでバレエジャンプ跳ぶところにシンバルのような音が入っていますが、これ原曲には入っていません。所々曲をいじりながら、音のニュアンスを上手く使って、技をより引き立たせる演技に仕上げました。

クラシック風な曲を、起承転結を意識し、音に対して忠実に捉え、最後の方は昔のスケートのプログラムで使われた技を駆使しリンクに描き出すもの。
大きな河の流れのような、何かそこに美しい物語が描かれているような、豊かな情景が広がっていて、気づいたら惹かれていき、感情を揺り動かされるそんな感覚のしたプログラムです!
2シーズン滑り込んだことにより、技術的にも、表現も完成されてきて、内なるエネルギーにも痺れた瞬間が訪れた時がありました!
様々な風景を魅せてくれて、本当にありがとうございました。という感謝の気持ちでいっぱいです。

さて、ここまで書かせていただきました。やはり、文章より、映像が一番分かりやすいですよね。
記事公開時点(2022年5月13日)フルで残っている演技映像をご覧いただき、ついでに参考にした資料一覧を貼ります↓

演技動画一覧
全日本
出典:FODプレミアム(※会員のみ視聴可能)
SP 全日本フィギュアスケート選手権2022 #5 男子SP① 02:00:45~02:06:45
FS 全日本フィギュアスケート選手権2022 #11 男子FS① 01:01:38~01:09:36

国体
出典:国体チャンネル
SP 1/29 成年男子(ショートプログラム) 2:05:30~2:10:40
FS 1/30 成年男子(フリースケーティング)1:08:12~1:15:01

参照外部資料
J:COM 札幌エリア 2019年11月18日初回放送
・Sapporoジモスポ★ はばたけ!未来アスリート フィギュアスケート男子 長谷川一輝
毎日新聞 2023年4月3日 朝刊 ※有料記事
挑戦楽しみ「我が道」を フィギュアスケート選手・長谷川一輝さん
日刊スポーツ 2023年1月5日18時50分 配信
【フィギュア】地元凱旋の長谷川一輝ノーミス131.79点 全日本のミス修正し成果につながる
出典:東京理科大学HP
本学学生が全日本フィギュアスケート選手権の出場権を3年連続で獲得
・TUS-ACT 特集インタビュー 大学生になったんだから 好きなことしないともったいない フィギュアスケート部 長谷川 一輝 さん
出典:スケート∞リンク 〜フジスケ〜
注目選手紹介 フィギュアスケート 長谷川 一輝 Kazuki HASEGAWA
出版:山と渓谷社
フィギュアスケート男子ファンブック Quadruple Axel 2022 五輪シーズン開幕スペシャル
出版:扶桑社
フィギュアスケートLife Vol.26
出典:フジテレビSPORTS 公式YouTubeチャンネル
・【全日本選手権への道 東京選手権2021】選手インタビュー動画〈フジテレビ公式〉46:04~48:29(その時間から再生します)
・出典:Pharrell Williams 公式YouTubeチャンネル
Pharrell Williams – Happy (Video)

・出典:The Capital Dance Orchestra 公式YouTubeチャンネル
Happy (Pharrell Williams Cover) – CHARTBEAT – Simon Marlow & The Capital Dance Orchestra

改めまして、お誕生日おめでとうございます🎉

大学4年生となり、本格的に研究室に配属されました。1年生の時の大学のインタビューでは、大学院進学を希望しているとのことでした。5/5時点では進退に関しては、まだ情報が無い状態です。

どうか学業とスケートの両方を極められますように祈ってます!

膨大な情報が詰まった今回講義に、最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました!ほんの1つでも魅力が伝われば幸いです。

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