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東日本フィギュアスケート特別講座2024

【最終講】東日本フィギュアスケート特別講座 長谷川一輝 中編

2023-24シーズンをもって現役引退となった男子シングル長谷川一輝選手(東京理科大学)
毎年誕生日に合わせて行った『特別講座』を、前編、中編、後編に分けて行います。中編では5歳から始まったスケート人生について話します。最後にぜひご覧ください!

2023-24シーズン、競技引退へ

2023年4月、大学4年生となり、研究室に配属されました。『バイオマテリアル(生体材料)』を専門にする研究室です。
朝と夜の貸し切りにフォーカスし、更に長時間に及ぶ時はリンクに通うこともでき、練習時間を捻出していました。

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2023-24シーズン、『選手としては、次の23~24シーズンが節目となりそうだ。』と記事に掲載されました。目標は、全日本のFSで後半グループ(SP上位12位以内が滑るグループ)に入ること『「フィギュアスケートに長谷川一輝がいましたよ」というのを出すこと』でありました。

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GWに行われたホームリンクで行われたエキシビジョンでは、Happyを披露しました!そして、3Aを見事に決めたのです。

SPは継続、FSは新しくすることになりました。前編にも書いた通り、このFSは曲調、ジャンプの難易度、エレメンツ配置、動き、何もかもが長谷川選手にとって大きなチャレンジとなるプログラムでした!3Aをシーズン中のほとんどの試合で、SPで1本、FSで2本挑戦しようとしていたところが筆者にとって大きな驚きでした。

7月の海の日にホームリンクで行われたエキシビジョンで、新しいFSを初披露しました!人前で演技を披露するという点では、長谷川選手にとって、これまでで最も早い時期に行われたものでした。冒頭、ジャンプの軌道に入る最中に、氷に引っかかる音が聞こえ、2Aとなりました。続くジャンプは3A!こちらは綺麗に決まりました!!3本目、助走の軌道からルッツを飛ぶかと予想していたところ、ループとなりました。振り返ると、これらは3A2本、3Lo+2A+2A+SEQというこれまでに比べ大幅に攻めた構成への布陣だったのです。
流れている音楽を自動で探し当てられるアプリがありますが、それを作動し忘れてしまい、曲は何なのかと筆者はずっと考えながら観ていました。琵琶や銅鑼の音が聴こえるため、中華系の音楽であるかと予想していました。最後のジャンプに入る前から、聞き覚えのある曲だと気づき、そのあとのStSqで、『ヴォ―カッション』だとようやく分かったというのが、初見での感想でした。鍵山優真選手(オリエンタルバイオ/中京大学)が使用していたこと、インパクトの強いボーカルによって、ヴォ―カッションのタイミングで気づく人が多かった模様でした。

翌週に行われた、『第2回関東学生有志大会』が、SPのみ実施、大会としては最も早い時期での初戦を迎えました!前編にも書いた通り、事前に観覧申し込みをすれば一般も観覧可能でした。しかし、個人情報の保護の観点から、HP上でのエントリー及びジャッジスコアの公開は無い大会でした。
当日、会場に行くと長谷川選手の姿があり、筆者は拝見することができたのです。6分間練習、ジャンプが一発で決まるような情況でした!そして本番、以下のポストが全てを物語っていました!

80点台をマークし、演技構成点で7点台が並ぶという結果になりました!

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8月のげんさんサマーカップ、長谷川選手にとって少なくとも公式戦においては初めて滑るリンクで行われる大会に、初出場しました!
SPでは全てのジャンプ要素にミスが出て、StSqでの特徴的な開脚ニースライドをスキップするような状態でした。21位でSPを通過しました。迎えたFSで奇跡の巻き返しが起こったのです!!冒頭3A+2Tのセカンドで堪えたあと、2本目の3A、3本目の3Lo+2A+2A+SEQも、全てのジャンプを成功させ、StSqでは手拍子が起こり、スタンディングオベーション、本人もガッツポーズが飛び出る演技となりました!FSは133.71で5位、総合8位まで順位を上げました!FSにおいてはこれが自己ベストとなります!

その翌週に行われた東京夏季フィギュアは有観客でかつ、FODの中継有りで行われました。SPはコンビネーション予定のところが1Lzになり、単独のジャンプだった3Fに+2Tを付けてリカバリーし、4位スタートとなりました。FSで、3A+2Tを決めたあと、1Aになり、3Lo+2A+2A+SEQは決めました。FS1位、逆転で優勝を果たしました!

9月の東京ブロックは有観客でかつ、FODの中継有りで行われました。その時の趣味がこちら

SPは3A、3Lz+3Tを決めて、最後のジャンプはダブルになりました。69.59で6位スタート、これがSPにおいて、『一般に公表された中では』自己ベストとなりました(本当の自己ベストは7月末の大会ですが…)!
FSの6分間練習の最後で、3A+3Tを決めていました!本番は3A+2Tにし、続く3Aがクオーテーションマークが付き転倒、3Loで転倒し、3連続ジャンプを付けられなくなりました。その後の3Lz+3Tを決めました。事前に提出する予定構成では、3A+3Tに始まり、1本目3Lzは3Lz+2Tにする構成です。3A+2Tになった場合、3Lz+3Tにするプランだったのです。

この大会後のインタビューで、ジャンプ面についての反省を見せていました。
3Aについては、大学生になってから形を変え、その形が出来てきて、自信があると話していました。
上京して間もなくは3Aが飛べたものの、形が崩れてしまった状況でした。そこから崩れないことと、横谷先生の理想とする形を擦り合わせ、2023年国体終了後から取り組んできた成果がようやく出たと振り返っていました。

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ブロック大会から2週間後、10月中旬に行われた東インカレは有観客、中継無し、FSのみ実施で行われました。冒頭の3Aは両足着氷、ダウングレード判定となりました。続くジャンプは2Aになりました。その次は、3Lo+2A+2Aの予定を、最後のジャンプを2Tに変えて対処しました。もしもこのまま2Aを飛ぶと2Aを3回飛んだ事になり、最後の2Aの点数が無効になるためです。その後は決めたものの、ChSqの最後のイーグルから飛ぶ3Lzが3Fと判定され、3Fを1本先に単独で飛んでいるため『3F+REP』となりました。3年連続2位表彰台となりました。

11月の東日本選手権も有観客でかつ、FODの中継がありました。長谷川選手にとって、2019年東北・北海道ブロック以来となる会場での大会となりました。この時提出した特技・趣味欄がこちら

SPでは、3Aを決め、続くコンビネーションのセカンドがダブルになりました。SP5位スタートとなりました。FSは冒頭3A+2T(3Aにqマーク判定)、3Aと決め、3本目は2Loになって両足付いたあと、2A+2A+SEQを飛び、結果あとに飛んだ2A+2A+SEQの点が無効になりました。StSqではレベル4判定となりました!総合5位で4度目の全日本出場権を獲得しました!

このあとのインタビュー記事で、初めて、卒業後東京理科大学大学院進学が決定したことが公表されました。
全日本では、FSの後半グループ入り、SP・FS合計で3本の3Aを決めることを目標にしていると語っていました。

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この東日本で、会場で直接演技を観ていた高橋大輔氏が目をつけ、『滑走屋』のアンサンブルスケーターに選ばれました!卒業研究発表で忙しくなる時期に行われることを承知の上でオファーを受けました!

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東日本の翌週に行われた国民スポーツ大会(国民体育大会から名称変更)の北海道予選に、2019年以来となる出場を果たしました。成年カテゴリーになってからは、実績を考慮し、先に北海道代表に内定が決まり、出場が免除されていました。今回はシードの有無は不明なものの、出場しました。

4度目の全日本、初めて出た全日本と同じく長野県長野市ビッグハットで行われました。SP、6分間練習は3Aを含め、ジャンプを全て綺麗に決めていました。冒頭の3Aが両足着氷、ダウングレードとなり、その後の2つのジャンプの着氷に乱れが出て、25位、SP落ちとなりました。

翌月のインカレ、7・8級クラスはコロナ禍以降初めて、SPとFS両方実施されるインカレでした。SPは冒頭2AになりGOEもマイナス評価、3Lz+3Tを決め、最後の3Fは両足着氷、ダウングレード判定となり、12位スタートとなりました。FSでは3Aを降りました(qマークが付く判定)!続くジャンプは2A+2Tにし、3本目は1Loになったあとに2A+2Tを付けました。もう2Tが付けられないという状況の中で、4本目は3Lz+3T決めました!演技後のキスアンドクライで、本人が『気合でいった』と語っていました。後半のジャンプは全て降りましたが、再び2本目の3Lzが3Fと判定され、3F+REPとなりました。FS10位、総合10位で最後のインカレを終えました!

インカレ後のインタビュー記事では『大学4年生のインカレは一つの区切り。進退についてはオフシーズンに入ってからじっくり考えたい』と語っていました。

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1月末の国スポは、2023年インカレと同じく、苫小牧市、nepiaアイスアリーナで行われました。SPは奇しくもインカレと同じ1番滑走となりました。6分間練習では、3Aを堪えて降りる場面がありました。冒頭が2Aになり、続く3Lzを綺麗に降りたあとに転倒、3Fに+2Tを付けてリカバリーしました。18位でFSは第2グループ1番滑走、6分間練習を挟んで前には相方の坪井聖弥選手(苫小牧市役所)が滑ることになりました。SPの時点では、北海道は入賞圏外という状況でした。冒頭3A+2Tを決め、続くジャンプは3Aで回転が認められた状態で転倒、3本目は1Loになったあと2A+2A+SEQを付けました。4本目は3Lz+2T、そのあとは全て決めました!FS9位、総合10位に上げ、相方の総合19位と合計して、都道府県別で7位入賞まで上げました!

国スポが終わって間もなく、滑走屋に向けて…となるはずでした。ドキュメンタリーでは、2/3、初日の練習に参加する様子が映し出されていました。5日に体調不良により、出演キャンセルが発表されました。

練習できた時間は僅かであったが、滑走屋のアンサンブルメンバーに選ばれたことを『光栄に思っています。』と感じていました。『アイスショーの方向性として、第一線で活躍している選手だけではなく、全日本には出ているけれど(メディアなどで)名前が挙がらない僕たちみたいな選手もしっかり見せてあげたいというコンセプトもいいと思いました。』とも語っていました。そして、『もし次のチャンスがあるならば、二つ返事で応じるつもりだ。』と強い意欲を伺わせています。

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長谷川選手の他にも、2018年国体で長谷川選手と共に北海道代表として出場した北村凌大選手(日本大学)、初演当日の朝に島田高志郎選手(木下グループ)、公演中に三宅星南選手(関空スケート)が体調不良のため降板となりました。筆者個人として、彼らの無念はいたたまれないものです。どうか、滑走屋の再演を、願うばかりです…

卒業研究発表会が終わった2月中旬、一つの決断をしました。それは、『競技引退』。
既に東京理科大学大学院進学が決まっており、研究、更に就活を行なうとなると、
『研究と就活に専念したいという気持ちにやっぱり正直になりたいと思い、決めました』
本人は2つの事なら何とか出来ても、3つもとなると難しいと語っていました。

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2月28日、長谷川選手本人のX(旧:Twitter)上で、現役引退を表明しました。3月18日に大学卒業、20日(水・祝)、明治神宮外苑スケートリンクで行われたエキシビションが、現役選手としての最後の演技の場となりました。

住吉りをん選手(オリエンタルバイオ/明治大学)、樋口新葉選手と共に出演しました。3番目に演技を披露しました。最後に選んだのは、2020-21シーズンSP『Anthem(from “Chess”)』でした。衣装は、2021-23シーズンFS『The Beatles Concert』のものを着用しました。前編にも書いた通り、曲の背景からして今の状況によく合ったものでした。
エキシビションが始まる前に、明治神宮外苑FSCの複数の後輩男子選手が紙バナーを配ってました。
リンクサイドに沢山の観客が立ち並び、長谷川選手の演技を見つめていました!演技終了後、大きくガッツポーズを上げ、大歓声、拍手が鳴り響き、暖かい雰囲気でした。演技後、弟弟子の選手から花束を貰い、もう一度リンクに一礼しました。

こうして、競技生活に終わりを告げました。

最後に出展一覧をご覧ください。

参照外部資料
放送:J:COM 札幌エリア 2019年11月18日初回放送
・[1]Sapporoジモスポ★ はばたけ!未来アスリート フィギュアスケート男子 長谷川一輝
出典:東京理科大学HP
[2]・クラブ・サークルクローズアップ フィギュアスケート部
出版:新書館
[3]・フィギュアスケート2019-2020 シーズンガイド
日本テレビ系列、関東圏 2019年8月23日放送
[4]・news every.
出版:読売新聞 2020年1月26日 北海道版朝刊
[5]・羽生選手の言葉で奮起 長谷川一輝選手(札幌藻岩3年)
出典:東京理科大学HP
[6]・TUS-ACT 特集インタビュー 大学生になったんだから 好きなことしないともったいない フィギュアスケート部 長谷川 一輝 さん
出典:東京理科大学HP 2021年3月22日更新
[7]・研究・課外活動の成果が優秀な学生を表彰
出版:山と渓谷社
[8]・フィギュアスケート男子ファンブック Quadruple Axel 2022 五輪シーズン開幕スペシャル
出版:扶桑社
[9]・フィギュアスケートLife Vol.23
[10]・フィギュアスケートLife Vol.26
[11]・フィギュアスケートLife Vol.29
出典:フジテレビSPORTS 公式YouTubeチャンネル
[12]・【全日本選手権への道 東京選手権2021】選手インタビュー動画〈フジテレビ公式〉46:04~48:29(その時間から再生します)
[13]・【全日本選手権への道 東日本選手権2021】選手インタビュー動画〈フジテレビ公式〉1:08:20~1:10:52(その時間から再生します)
日刊スポーツ 2023年1月5日18時50分 配信
[14]・【フィギュア】地元凱旋の長谷川一輝ノーミス131.79点 全日本のミス修正し成果につながる
毎日新聞 2023年4月3日 朝刊 ※有料記事
[15]・挑戦楽しみ「我が道」を フィギュアスケート選手・長谷川一輝さん
[16]・2023年5月23日 公開
「長万部に行けなくても…」理系スケーターがコロナ禍で得たもの
[17]・2023年6月4日 朝刊
異例の理系生活、刻む 節目の来季、全日本へ 長谷川一輝選手
[18]・2023年9月24日 公開
長谷川一輝「自分らしさを見せたい」 フィギュア東京選手権フリー
[19]・出典 4years. 2024年1月23日(最終更新:2024年1月25日) 公開
インカレフィギュア男子は中京大・鍵山優真が優勝 同志社大・森口澄士はペアで世界へ
[20]・出典 4years. 2024年2月29日 公開
東京理科大・長谷川一輝が現役引退 大学院でバイオマテリアルの研究に専念
出典:スケート∞リンク 〜フジスケ〜
注目選手紹介 フィギュアスケート 長谷川 一輝 Kazuki HASEGAWA
出典:フジテレビSPORTS 公式YouTubeチャンネル
[21]・【フィギュア】東京・東北北海道・関東 選手権 出場者インタビュー シニア男子 Vol.3〉11:04~12:49(その時間から再生します)
出展:FNNプライムオンライン 2023年11月9日公開
[22]・佐藤駿が自己ベスト更新し圧巻の演技で優勝「ここで終わりではなくここから」。女子は青木祐奈が優勝【東日本選手権】

以上で中編は終了となります!

インタビューで度々『全日本』という言葉が出て、コロナに、3Aに、学業との両立と、様々な出来事が起こる度に悩みながら進んでいった18年間だったと、筆者は振り返っています。

長谷川選手にとって、3/20のエキシビションはスケート人生の大きな区切りであったことは間違いありません。ただ、これから先の人生は続いていくでありますし、その中でどうスケートと関わっていくのか、ファンだけでなく、本人も予想だにしないところもあるでしょう。その中で一つ言えるのは、長谷川選手のスケート人生は、本人の持っている才能と幾重の努力、多くの人に支えられ歩んできたということでしょう。歩んできた道のり、その一部を見て、心揺さぶられる場面があり、いつまでも記憶にとどめたいと思っているファンがいます。筆者はその一人です。

後編では、今まで積み上げてきた魅力について講義していきます。ラストを締めくくればという感じです!

乞うご期待ください!

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