(続き)
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弾く時意識していたこと
まずは、ジョシュ・グローバンの公式YouTubeチャンネルにMVが投稿されているのでそれをご覧ください↓
今回以下の楽譜を使用しました↓
Anthem (from ”Chess”) / ピアノ(ソロ)
Anthemは色んなアーティストが歌っている曲です。ジョシュ・グローバンのバージョンだと、前奏の部分が少しアレンジがされてる気がするのですが…なので、プリント楽譜とは相違する点があることを承知した上で弾きました。絶対音感はなく、相対音感も鈍く、いわいる耳コピが出来ないで、完全に再現するのは無理でした。
音が違うのは予めご承知おきください。
今回この曲は、国を捨てて新たな人生を歩むと決めた登場人物の気持ちを歌ったものです。
終始4分の4拍子で、ニ長調と推定して弾いていました。最初はピアノ(p)で、だんだん強くなり間奏の手前でメゾフォルテ(mf)、サビでフォルテ(f)になって最後気持ちテンポと強さを落としてから、ピアノで長く伸ばして終わりという曲構成です。
筆者が聴いて思うイメージは、
冬の夜に、まず水滴が滴り落ちる音。そこから迷い、考えを巡らせ、段々灯りが灯って気持ちが明るくなる
という感じです。
最初の音が、水滴が落ちたような音に感じたのです。ピアノとは言えど、音の粒がはっきりと聞こえないと水滴がポツンと落ちたようには感じないなと思いましたね。
前半は問いかけるようにと、所々に出てくる3連符や符点でリズムが狂わないように気をつけながら弾きました。
間奏から一気に和音やオクターブが増えていきます。フルオーケストラの曲をピアノソロに置き換えると、どうしても和音だらけになるのは仕方のないことですが…まあ、弾く側としてはミスタッチする確率が高まるのでヒヤヒヤしますね。更に、曲が最も盛り上がり、感情が高まる場所であるため、上手く弾きこなせなかった時は大変でした!余裕がなくなりましたね。キャパオーバーの状態が続いて、パニックになります。ある程度弾けるようになっても、ミスタッチしたら一気にテンションダウンしちゃいました。
これを乗り越えるには
☑手の形をキープした状態で、和音を連続して弾くこと
☑スムーズに音が出るようになるまで繰り返し練習をすること
この2点を意識しました。前者は、同じ手の形をして、2音の和音弾いても3音の和音にすぐに弾ける体勢にしていくことを意識してました。もう迷ったら終わりでしたので!それが出来るように、やはり部分練習は大事です!
最初に長谷川選手のバージョンで練習していたので、どんな気持ちで滑っているのかを考えて弾いていました。だが、しばらくするとそれは違うのかなと思い始めました。選手は曲から感じたことをスケートに翻訳して表現してるからです。その翻訳したものをまた更に翻訳すると、もともとのものと違ってしまわないかと思ったのです。それに加え、長谷川選手は歌いながら滑っていたのです。そこで、
歌えるにはどうすればいいか
と発想を転換しました。伴奏を弾いていると思って弾くことにしました。ちなみに、筆者が学生の時に合唱コンクールで伴奏を引き受けると、焦りからテンポが速くなって、よく暴走していると文句言われてました。息継ぎを意識して、そこを気持ち1拍分余計に取ることを意識しました。すると、実際のミュージックタイムより早かったのですが、それを解決するのにも繋がりました!
色々書いておいて最後に1つ言います。
ミスなく弾こうとすると、感情表現するのが難しくはなりますが…(おい)
理想通りには上手くいかなかったのですが、まあ、ご覧いただけたら幸いです。
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山本草太選手バージョンについて
振付は当時所属していたクラブの先輩で、2010・2014年五輪出場の鈴木明子さんによるものです。
まずは参考までに2018年3月に行われたクープ・ド・プランタン公式アーカイブ映像をご覧ください↓
山本選手は予定として
コンビネーションジャンプ→ジャンプ→スピン→ジャンプ→スピン→ステップシークエンス→足替えコンビネーションスピン
でした。最後の2つ以外のエレメンツが具体的に示してないのは、大怪我から復調するシーズンであったためジャンプの構成が試合ごとに変わっていた事と、インターハイに出場するにあたり、スピンの種類をその時だけ変える必要があったためです。
前奏の最後でコンビネーションジャンプを跳び、歌が始まります。Aメロ前半が終わる頃にまたジャンプを跳んでいきます。降りたあとからいきなりBメロにワープして、その最中にスピンが1つ充てられています。スピンが終わってから、Bメロのクライマックスを経て、間奏の真ん中程でジャンプを跳びます。スピン終わってからジャンプまでで、クロス等をして加速することで決意を表そうとしてるかなと思ってます。
ジャンプを降りたら直ちにスピンを実施し、それが終わるとサビが始まります!ここでステップシークエンスが来たーとなります!
サビでステップシークエンスに充てるのは分かる!!
と言いたくなります!フォルテで、曲が1番盛り上がるところで、ステップで盛り上げたくなりますよね(弾く側はミスらないかヒヤヒヤしますが😂)!思いの丈を伸びるスケーティングから生まれるステップに込める姿を見れるのは幸せですね。
最後に向けてためるタイミングで、
ツルスケにイーグルは大正義!
と言わせる、大イーグルからの、最後長く伸ばすところで足替えコンビネーションスピンを実施します。原曲では2拍ずつ和音を4回弾いてから、最後に和音をジャーンと弾いてフィニッシュします。山本選手のバージョンでは、2拍ずつ和音弾くのが4回に、更にもう2回加えてからフィニッシュしています。
ミュージックタイムは2分47秒前後でした。
それでは、完成形をご覧ください↓
山本選手のAnthemは、当時氷上に立つまでのストーリーも相まって、涙をいくつ流せば良いんだろうと思った程、心に残るプログラムです。これを今回弾けたことを誇りに思ってます!
最後に、長谷川選手のバージョンについて語ります(長くなりすぎないように😂)!
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長谷川一輝選手バージョンについて
振付は、長谷川選手のコーチでもあり、1995年全日本選手権女子シングル優勝者の横谷花絵先生です。
まずは参考までに2020年全日本選手権(有料)と、2021年国体の公式アーカイブ映像をご覧ください↓
長谷川選手の予定エレメンツは
3Lz+3T→3A(実際は2Aがほとんど)→足替えシットスピン→フライングキャメルスピン→3F→ステップシークエンス→足替えコンビネーションスピン
でした。
最後のジャンプの位置と、スピンの位置が入れ替わってる所以外は、構成の種類はほぼ同じです。長谷川選手はこう動くと上手いんだと思わせるのが大きな特徴でありますが、こうして続けてみていると山本選手のものを意識した振付もあるような気がします。
そこはさておき…
ぽんと音が鳴って1秒も満たないタイミングで動き出します。中々音を聞いてから動くのは難しいことなので、凄いなーと感心してしまいます!
冒頭のコンビネーションジャンプはほぼ同じ流れで、ボーカルが始まって数小節でAメロの最後の方にワープします。そのタイミングでアクセルジャンプを跳びます。この辺の曲の切り方に関しては、山本選手のものとは大きく異なるところです。着氷してすぐにツイズルを挟んで足替えシットスピンを実施します。この時にはBメロに入っています。スピンが終わる頃には1つのフレーズが終わり、ここでこのあとの歌詞は1フレーズカットされ、次のスピンへのつなぎの振付が入ります。
フライングキャメルスピンでは、今までの迷いを振り切る歌詞の部分が充てられています。音楽的にも、和音を同時ではなく少しタイミングをずらして弾いてから、また和音を複数回弾いて場面が変わろうとしたあとの部分です。そこから今までとは違うリズムのパターンになるところです。ここから和音地獄が始まるのですよ…😂
音がクレッシェンド(段々強く)なるタイミングで力強くバッククロスをし、間奏の出だしのチャーン♪に合わせて大きな軌道を描く綺麗なレイバックイナバウワーを披露します。それから間もなく(予定では)トリプルフリップを跳びます。降りた直後にツイズル、ターンが入ってステップシークエンスが始まります。
やっぱサビのところでステップシークエンスを充てますよね!
弾く側としてはヒヤヒヤしますがね😂あっ、正確に言いますと、長谷川選手の場合は、間奏の中間部の一旦デクレッシェンド(段々弱く)がかかる部分付近からスタートしています。そこからまたクレッシェンド(段々)かけていき、サビに突入していきます。ジャッジ側から見て右端からスタートし、ステップシークエンスの後半付近でサビに入るのです。ホップやランジ等、わりと印象に残りやすい振付もこの辺に入ります!ステップシークエンスでもいきなり見せ場ではなく、段々と盛り上がっていくような振付をしたのかなと推察しています!それを踏まえると、音楽的にも最適な場所だと感じます!
最後に向けてためるタイミングで、
やっぱツルスケにイーグルは大正義!
と言わせる、大イーグルしながら拳をぎゅっと握りしめてからの、最後長く伸ばすところで足替えコンビネーションスピンを実施します。長谷川選手のバージョンでは、原曲通りの編集でした。
そして、拳を突き上げてフィニッシュポーズ!もう、感動で胸いっぱいになります!
ミュージックタイムは2分47秒です(国体でタイムが表示され、ほぼ音の始まりと終わりに合わせて動いていることを考慮した結果です)。
それでは、完成形をご覧ください↓
長谷川選手は、新型コロナウィルスの影響により、上京のタイミングが1年早まりました。本来なら1年間、北海道の長万部キャンパスという近くにリンクが無い小さな町で寮生活を送る予定でした。急遽、環境が大きく変わる事になって大変だった中、ジュニア時代から4年間、ずっと跳ね返されていたシニアの全日本選手権の舞台を初めて掴んだのです。そして、その大舞台での演技は筆者にとって素敵なクリスマスプレゼントとなりました。もう一度ピアノを弾くきっかけを与えてくれたことに、感謝しています。
山本選手、長谷川選手、両選手が来季のご活躍をお祈りしています。
いかがでしたでしょうか?
本当は長谷川選手の誕生日に公開したかったのですが…まあ、よしとしましょう!
ピアノで実際に弾いてみると、曲の構造を理解することができ、このメロディーを表現するためにこの振付をしたのかなと推察するという新たな楽しみが生まれました!
凄く勉強になりましたね!また今後も仕事しながら、色々条件を乗り越えながらピアノ続けていけたらいいなと思ってます!
また今後も(なんとか)公開できるレベルになりましたらYouTubeに公開し、ブログ記事を書いていきます!不定期になりますが、公開した時はぜひご覧ください!
あと、【2021年版】 東日本フィギュアスケート概論シリーズも更新していきますのでこちらもご覧ください!
また次回の更新をお楽しみにして頂けたら幸いです!