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【レビュー】全日本フィギュアスケート選手権大会 2023年 競技3日目 ペアFS,男子FS編

第92回全日本フィギュアスケート選手権競技3日目、ペアFSと男子FSの全選手・組の感想をまとめます

第92回全日本フィギュアスケート選手権大会
日程:2023年12月20日(水)~12月24日(日)
会場:ビッグハット(長野市若里多目的アリーナ)(長野県長野市)

まず、ペアFSからご覧ください↓

ペア

1.長岡柚奈/森口澄士選手組(ナガオカユナ/モリグチスミタダ) 木下アカデミー

FS:Space Table Symphony(演奏:Bernd Breiter&デイヴィッド・ギャレット&Le Shuuk)
FS振付:キャシー・リード

SPの明るくポップな演技とは、打って変わってスケール感のある曲を選びました!四季をテクノ風にアレンジした曲です。

冒頭の2Twを綺麗に決まり、SBSの3Lo+2A+2A+SEQを鮮やかに決め、もうそこからはミスする気配を全く感じさせない雰囲気になりました。その後は目に分かるミス無く、二人に魔法がかかった素晴らしい演技でした!!アイスダンスのような緻密さと、ペアのダイナミックさ、スピード感を融合させたプログラムに魅せられました!会場総スタオベ!

長岡選手は北海道時代、シャープなスケーティング、動きの引き出しの多さが印象的に残っていた選手でした。たった7・8ヶ月前の決断から、競技生活が大きく変わりました。ペア経験のある森口選手の導きもあり、試練を乗り越えてきた姿が目に浮かびました。

二人の化学反応から生み出される演技に、感銘を受けました!

117.57 173.64 SB


引き続き男子FS第1グループ1~6番の選手の感想をどうぞ!

男子FS 第1グループ

1.蛯原大弥(エビハラダイヤ)選手 明治神宮外苑FSC

FS:映画『ミッション:インポッシブル』より
FS振付:岩本英嗣

ジュニアから推薦で出場し、FSに進出しました!

ジュニアのFSとの大きな違いは、StSqがあるかどうか、演技時間も長くなります。どこにStSqが入るのか、それに伴ってどう曲を足していくのか、1つの注目ポイントにもなります。

昨季から継続のプログラム、StSqが入ることもあり、いつもとは違うプログラムになるので楽しみにしてました!

6分間練習の最後に3Aを決めました!6分間練習が終わった直後に滑走となります!冒頭、SPでは転倒した3A、見事に決めました!6練の良いイメージがあってなのか、これで流れに乗りました!

その後は盤石な体制、次々とジャンプを決めていきました!

2A+3Tのあとから、ジュニアとは違う曲が入っているように聴こえました。それから、1番最後のジャンプである3Sを降りて、FSSp、ChSqをして、お馴染みのテーマ曲の部分でStSqに突入しました!ChSqのところをシニア尺ではStSqに変えるのも、1つの策略です。蛯原選手のこのプログラムの場合、最後をStSqに変えて、ターンを切るさいに激しさを表して印象づけようという狙いがあると考えてます。

パワーとキレがあって、気迫を感じる延喜でした。チャンスをモノにしていこうという、意志の強さも伝わりました!

ガッツポーズ飛び出た!スタオベもありました!

131.11 192.86 SB

2.田内誠悟(タウチセイゴ)選手 富士FC

FS:映画『ムーラン・ルージュ』より
FS振付:安藤美姫

前に滑った蛯原選手に引き続き、ジュニアから推薦で出場した選手です!2年連続で出場となります。

昨季のFSでムーラン・ルージュを使用し、今季も継続していました。しかし、10月に安藤美姫先生のもとに移ることになった際にSP・FS共にプログラムを作り変えることになったのです。FSは元々の配置をほとんど変えずに、曲を一部差し変え、振りも変えるという措置が取られました。

中盤に、物語の中で1番盛り上がる曲『Come What May』を入れました。そこにChSqを配置し、直後にStSqを付ける選択を取りました。StSqのエンドに、ジュニア尺のChSqの最後の見せ場、レイバックニーズライドを入れて、観客にインパクトを残しました。

最後までしっかり集中して、挑んでいこうという思いが見えました。

しなやかで繊細な所作に、どんどん力強さが加わっていく。その過程を見ていくのがとても楽しみな選手だと、改めて感じました!

126.12 190.01

3.木科雄登(キシナユウト)選手 関西大学

FS:Primavera/In Un’Altra Vita(演奏:ルドヴィコ・エイナウディ)
FS振付:樋口美穂子

1日目でも言及した通り、高橋大輔さんがプロヂュースするアイスショー滑走屋にてアンサンブルスケーターとして出演予定の選手です。

シニアに上がってから、初めて全日本のFSに進出しました。3年ぶりの全日本FSに対し、これまでの悔しさを晴らし、この演技に懸けるという強い思いが伝わってきました!

静かに、冷たさを感じる音楽、冬の嵐でも表すようなメロディーが流れる中、最初の3Aは転倒してもすぐに立ち上がり、その他のジャンプは全て降り立ちました。

後半1番最初のジャンプである、3Fからパンフレットに記載の無い曲が挿入されています。前半と同じアーティストによる曲です。

全てのジャンプを終えた後に配置されたChSqにて、リンク中央でホップ、大きな軌道を描くイナバウワー等が印象に残りました!

123.60 188.12

4.垣内珀琉(カキウチハル)選手 ひょうご西宮FSC

FS:Wake Me Up(歌:アヴィーチー)
FS振付:佐藤操

ジュニアから推薦出場し、既に2024年ユース五輪日本代表として内定しています。世界ジュニア選手権代表を懸け、このFSを滑ります。

昨季から継続のプログラム、SPとは打って変わって明るいプログラムです!

3本目の3連続ジャンプの前に手拍子が鳴ってしまうほどノリの良い曲です!2023年国体では、リンクサイドの仲間がライブ会場かとつっこみたくなるほど、曲に合わせて体を揺らして盛り上げてたのを思い出しました(笑)

2Aのあとジュニア尺ではChSqだったところをStSqに充てて、3Lz+2TそのあとにChSqを新たに配置しました。

SPでは転倒した4Tをなんとか堪えて降りつつも、最後まで軽快に、颯爽と踊っていく姿が光ってました!

131.72 196.30 SB

5.大島光翔(オオシマコウショウ)選手 明治大学

FS:映画『ムーラン・ルージュ』より
FS振付:シェイ=リーン・ボーン

アイスショー滑走屋にてアンサンブルスケーターとして出演予定の選手です。

SPではマリオになりきり、話題をさらった大島選手!FSは、自身初の海外の振付師によるプログラムで挑みます!

リンクサイドに中野園子先生もいました!大島選手の父でもありコーチが、かつて中野先生のアシスタントコーチを勤めていたことがきっかけです。

冒頭は、昨季後半から挑戦していなかった4Lzを、今季初挑戦しました!

『ネイチャー・ボーイ』から始まり、FCCoSpのあとに『Because We Can』という流れはいつも驚いてしまうのです。初戦で観客から笑いが起きました。退廃的な雰囲気から一転、突然、はいどうもーって漫才の曲が流れてくるからです。歌詞の内容も、愛とは何かから一転、ただ出来る、出来ると叫んでいるものなので、ギャップを感じました。Because We Canはムーラン・ルージュの中で流れた曲でもあります。

ユア・ソングでStSqとChSqの連続は、大切な人へ思いを伝えているように感じました!最後は、リンク中央のカメラに向かって薔薇を差し出す動きをしました!

ムーラン・ルージュのメドレーで入れるのは珍しい曲を使ってて、新鮮さを感じました。挑戦しつつ、華やかで情感こもった演技が印象的でした!

122.47 189.36

6.高橋星名(タカハシセナ)選手 木下アカデミー

FS:ミュージカル・映画『レ・ミゼラブル』より
FS振付:キャシー・リード

ジュニアから推薦で出場を果たした選手です。今季がジュニアデビューです。

SPではコミカルな曲調、FSではドラマチックな演技へと変えていこうとしてる風に思えます。

3S3Tのあとオン・マイ・オウンに合わせてChSqを配置しました!そこではしっとりとした滑りを魅せていました!ラストジャンプのあと群衆の歌に合わせてStSqを配置しました!そこでは、革命軍を率いる、勇ましい姿を表していました!

曲によって、滑りのタッチ、伝えたい思いを変えていくのが印象的でした!

体を大きく使って、世界観を伝えていこうとする姿が素敵でした!

本人も、終わったあとにっこり笑顔、お辞儀のあと手を振りました!

123.49 191.77

次は第2グループ7~12番の感想です。

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【レビュー】全日本フィギュアスケート選手権大会2023 競技2日目 アイスダンスRD,女子SP編

第92回全日本フィギュアスケート選手権競技2日目、アイスダンスRDと女子SPの全選手・組の感想をまとめます

第92回全日本フィギュアスケート選手権大会
日程:2023年12月20日(水)~12月24日(日)
会場:ビッグハット(長野市若里多目的アリーナ)(長野県長野市)

まず、アイスダンスRDからご覧ください↓

アイスダンスRD 第1グループ

1.国村柚里/坂部魁士選手組(クニムラユリ/サカベカイジ) 臨海フィギュアSC/大阪経済大学

RD:She Drives Me Crazy/Jessie’s Girl(歌:ファイン・ヤング・カニバルズ/リック・スプリングフィールド)
SP振付:有川梨絵

今年競技会デビューしたカップルです。

男性は全日本ノービス選手権のアイスダンスで出場経験がある選手です。女性・男性共に初のシニアの全日本の舞台となります!

今季のリズムダンスの課題は“Music and Feeling of the Eighties”、直訳すると『1980年代の音楽と感じ』を全カップルがテーマにして作っています。

『She Drives Me Crazy』は1988年、『Jessie’s Girl』は1980年にリリースされた曲であります。

男性が背が高いというのもあり、3階席からもスケールが大きく見えました。

ノリの良い曲を男女ピッタリと動きを合わせて滑っていく姿に目を惹きました。これほど大きな舞台は初めてであろうかと思いますが、堂々と、踊っていく姿勢が素敵でした!

40.71

2.小松原美里/小松原尊選手組(コマツバラミサト/コマツバラタケル) 倉敷FSC

RD:映画『ゴーストバスターズ』シリーズより
RD振付:ロマン・アグノエル

『チームココ』の愛称で知られるカップル。2016年にカップル結成、2017年に結婚し公私ともにパートナーとなりました。男性はアメリカから帰化し、現在は国際大会では旧名『ティム・コレト』、日本では『小松原尊』として出場しています。北京五輪に出場を果たし、次の五輪を目指していく大ベテランカップルです!

映画『ゴーストバスターズ』シリーズの1番最初の作品は1984年公開なので、80年代のテーマに、まあ、沿っていますね。

コールの後、2人敬礼ポーズ

DiStで向かい合って女性が狙い撃ち、他にもゴーストバスターズのお馴染みのメロディーに合わせたユニークな振付が組み込まれてました!

最後のお辞儀も、世界観そのもの!着実にエレメンツをこなし、世界観を伝えるというミッションをコンプリートした達成感が伝わる!

最初と最後が比較的世間に知られている、馴染のある曲で安心感ありました。『あっ、ゴーストバスターズだ』とインパクトを残していきました。

楽しい演技でした!

70.89

3.田中梓沙/西山真瑚選手組(タナカアズサ/ニシヤマシンゴ) オリエンタルバイオ

RD:ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』シリーズより
RD振付:ロマン・アグノエル

今年結成されたカップル。『あずしん』として親しまれています。女性はシングルでジュニアグランプリシリーズに出場経験がありますが、アイスダンスそのものが初めてとなります。男性は2019年からシングルと並行してアイスダンスを始め、全日本ジュニア優勝、世界ジュニア選手権出場を果たしたことがある選手です。今年シングルを引退し、アイスダンスに専念しています。男女共、シングル・アイスダンスの両方で全日本出場を果たしました。

『スーパーマリオブラザーズ』は1番最初に発売されたのが1985年ですので、80年代というテーマに…まあ沿っていますね。

衣装からして、男性が兄マリオ、女性が弟ルイージという設定が伝わります。男女で組む競技は、男性はヒーロー、女性はヒロインを演じる中、女性も男性キャラを演じるところが非常に珍しい設定です。

ゴール後、進むような動きをしながらスタートポジションにつきました。

PDの時、男性、女性がそれぞれ、高く足を上げて滑るシーンに拍手も👏

最後は勢いありながら、エレガントに、正確にターンを踏んでいき、『It’s me Mario!!』で腕組んでフィニッシュ!

ユニークさと気品あふれる実施に、会場スタオベ!

71.08 SB トップに立ちました!

アイスダンスRD 第2グループ

4.佐々木彩乃/池田喜充選手組(ササキアヤノ/イケダヨシミツ) 日本大学/西武東伏見FSC

RD:Wake Me Up Before You Go-Go/ケアレス・ウィスパー/Wham Rap!(歌:ワム!(1・3曲目)/ジョージ・マイケル(2曲目))
RD振付:マリオン・デ・ラ・アソンション

今年結成されたカップルで、女性はシニアの全日本は初めて出場を果たしました!

1981年~86年にかけ活動したワム!の名曲メドレー。2曲目はジョージ・マイケルがカバーしたバージョンを使用しています。

女性の衣装が原色を使用したスタイルで、遠くからもはっきりと見えて、目を惹きます!

アクティブに滑り、ポップな踊りを披露していました!二人の表情が豊かなカップルという印象でした!

キスクラでは、コーチの一人砂山朱先生の生徒が代々抱えてきたくまのぬいぐるみがいました。

51.47

5.吉田唄菜/森田真沙也選手組(ヨシダウタナ/モリタマサヤ) 木下アカデミー

RD:ワイルド・チャイルド/恋はワイルド・シング/ワイルド・サイド
RD振付:歌:イギー・ポップ/X/モトリー・クルー

今年結成され、『うたまさ』の愛称で親しまれているカップルです。カップル男女共に、ジュニア時代に別のパートナーで全日本Jr.優勝、世界Jr.出場の実績があります。10月に行われた予選会では、優勝を果たして迎えた、初めてのシニアの全日本。

1曲目は1986年にリリース、2曲目は1965年に最初に発表されたものを、1984年にアメリカのバンドXがカバーしたものを使用、3曲目は1987年にリリースされた曲です。

冒頭、男性がいきなりバタフライして筆者はびっくりしました。

男女共スケーティングに勢いがあり、アップテンポに対してもピタッ、ピタッっと音と動きを合わせていける力に目を張りました!SqTwの中の3つ目のツイズルで男性が転倒するミスがありましたが、最後までビュンビュン飛ばしていく演技

持味のスピード感を存分に活かしたプログラム!女性のパンツスタイル、男女とも黒と赤がベースの衣装というのもあり、二人はF1レーサーかと思いました。スリリングな一時でした!

64.00

6.木下あかり/田村周彦選手組(キノシタアカリ/タムラタカヒコ) 慶應義塾大学/三田スケートクラブ

RD:女神達への情歌(報道されないY型(ケイ)の彼方へ)/いとしのエリー/希望の轍(歌:サザンオールスターズ)
RD振付:宮本賢二

2年連続2回目の出場のカップル。男性がこの春に慶應義塾大学を卒業し、一般企業に勤めながら競技を継続しています。

1曲目は1989年、2曲目は1979年、3曲目は1990年に発表された曲になります。厳密に80年代でなくても、その時代に近い雰囲気を出せばよいという解釈なのでしょうか。日本の80年代はこんな感じだったよねという、衣装や曲を選んできた印象です。

サザンオールスターズの曲を、フィギュアスケートで使うという斬新な発想です。日本語の曲で、世間に広く馴染みがあり、全日本という舞台であるからこそ、観客が容易に世界観を解釈しやすくなると感じました。

滑りは、同じ大学同士で年齢が近いこそだからできる信頼関係が、大きな持味のカップルです!呼吸をそろえ、安心してリフトが見られるそんなカップルです。

最後の希望の轍では、観客が容易にノリやすいので手拍子が起こり、インパクトを残していきました。爽やかな演技がとても素敵でした!

47.30

今季のRDは、1980年代付近の曲、映画、ゲームであれば良いということなのでしょうか。後で調べてみて、ゴーストバスターズ、スーパーマリオブラザーズは1980年代に最初に生まれたことを初めて知りました。作品背景、歌詞の意味を知ると、より観戦が楽しくなりますね。

続いて女子SP第1グループ1~5番の感想です。